與三野先生ゼミ(2020)

研究主題

 本ゼミナールでは,コーポレート·レポーティングにおいて,ビジネスモデルを開示する意義と役割について理解することを目標とします。ビジネスモデルとは,一般的には,どのように事業活動を行い,どこで顧客にベネフィットを提供して収益をあげるか,に関する具体的な仕組みをいいます。このビジネスモデルは,1990年代中頃から,おおきく着目される研究分野となっています。たとえばITの発展によるビジネスでは,インターネットのニュースサイト等に広告を掲載することによって収益を得る広告モデルや,商品やサービスを顧客に定期的に利用してもらうことによって収益を得る継続的な課金モデル等は,皆,ひろくなじみがあるでしょう。コーポレート·レポーティングの分野では,現在,このビジネスモデルが,投資者が企業のパフォーマンスや将来性を評価するときの基礎となるものであるため,ビジネスモデルを積極的に開示していこうと,活発な議論が展開されています。
 このようにビジネスモデルは,どのようにビジネスを行い,どこで収益を上げるかについての稼ぐ仕組みですが,これを専門的に紐解くと,中心となる企業と,顧客やサプライヤー等のパートナーとの取引を,どのように組織し,どのようにコンテンツを組み立て,さらにどのようにガバナンスをおこなっていくかについての仕組みということができます。複雑で取引が多岐にわたる企業活動において,企業が,組織,コンテンツ,そしてガバナンスのどこで収益を上げることができているかを理解することは,その企業の価値と将来性を評価するうえで,重要性がとても大きくなっています。

研究内容

 そこで,本ゼミナールでは,稼ぐ仕組みとしてのビジネスモデルを理解します。ここでは,なぜ一部の産業は,他の産業よりも,平均的に高収益なのか,また,同じ産業内でも,なぜ一部の企業は,他の企業よりも高収益なのか,について,ビジネスモデルを紐解きながら,アマゾン,ネットフリックス,マイクロソフト,アップル,ウォルマート,セブンイレブン,NTT ドコモ,ソフトバンク,楽天等の代表的な企業の事例を豊富に取り入れて理解することに注力します。

 第一に,企業の収益性を決定する要因について学習します。企業の収益性を決定する要因には,(1) 自社製品·サービスの競争要因と脅威,他企業との協働関係,および,マクロ的な経営環境等の産業に関する要因と,(2) インプットとしての経済的な資源の獲得と醸成,経済的資源を価値創造に結びつける事業活動,また,川上,川中,川下の垂直的な分業と水平的な分業のポジショニングといった企業に特定の要因があります。これらの要因を理解することによって,ビジネスモデルが企業のパフォーマンスや将来性を評価するために,どのように役立つかについて概観することにします。
 1. 自社製品·サービスの競争要因と脅威
 2. 他企業との協働関係
 3. マクロ的な経営環境
 4. インプットとしての経済的な資源の獲得と醸成
 5. 垂直的な分業と水平的な分業のポジショニング

 第二に,ビジネスモデルのコンポーネンツを理解します。ここでは,企業が,どのように経済取引のパートナーとの関係を組織し,ビジネスコンテンツを生み出し,それらの組織とビジネスコンテンツを統制,統治することによって,ビジネスモデルを組み立てているかについて学習します。
 6. ビジネスモデルとは
 7. どのように経済取引のパートナーとの関係を組織するか
 8. どのようにビジネスコンテンツを生み出すか
 9. どのように組織とビジネスコンテンツを統制,統治するか
 
 第三に,イノベーティブなビジネスモデルを創出するために重要な役割を果たす,事業の差別化,統合,それらのガバナンスについて,より深く学習します。
 10. 事業の差別化
 11. 事業の統合
 12. 事業の差別化,統合とガバナンスの役割

研究方法

 これらの第一~第三を3年次に学習した後に,4年次では,各自が特定のビジネスモデルモデルを採用している企業群を事例として取り上げ,ビジネスモデルがどのように企業パフォーマンスに結び付いているかについて掘り下げて研究します。さらに,取り上げた企業群がどのようにビジネスモデルを開示しているか,それがどのように企業価値の評価に役立っているかについて研究します。ここでの事例研究は,企業のビジネスモデルを文献等で一定の程度,理解したうえで,各自が企業に直接にインタビュー調査することを予定しています。インタビュー調査では,文献等ではアクセスできない,または理解することが難しい内容にまでふみこんで調査して,深い洞察力を養成することが期待されます。
 13. ビジネスモデルの事例研究
 14. ビジネスモデルの開示とパフォーマンス
 15. ビジネスモデルの開示と企業価値の評価
 16. 事例研究と卒業論文の作成

開講頻度

 隔週

その他

 ビジネスモデルの事例研究では,文献等の調査だけではふみこんで理解できない内容について,インタビュー調査を実施します。そこでは,事前に十分な文献等の調査をしていないと,企業のインタビュイーに踏み込んだ内容を質問して,ビジネスモデルのコアとなる内容にまでアクセスすることができないでしょう。したがって,自ら積極的に研究をすすめる意識をもった学習態度が望まれます。また,企業へのアクセスについては,指導教員が,自らのネットワークを駆使することによって,学生の学習意欲を積極的にサポートします。さらに,事例研究の研究内容がとても良いものに仕上がっていることが実感できた段階で,他大学のゼミナールとの共同によって,他大学の学生の前で研究発表を行う機会を複数回,設定します。このような機会は,学生の分析的な能力の養成と,プレゼンテーションのスキルの向上に貢献します。