学生イニシアティブで推進する「こどもMBA(Mountain Based Activities)」を通じた,社会課題の解決に挑む地域団体と連携した体験型環境教育プログラムの開発と,ツーリズム商品としての収益化に向けた大学院教育体制の整備

研究プロジェクトの目的

本研究プロジェクトは,大学が地域連携の拠点として期待されている点に注目し,様々なバックグラウンドや専門性を持つ学生が主体となり,地域の子育て世帯に体験型の環境教育プログラムを提供する「こどもMBA」を設立し,また,社会課題の解決に挑む地域団体との連携を通じて,社会課題の解決に資するツーリズム商品としての収益化に向けた産学連携を推進していくことにあります.

本研究プロジェクトは,経営学研究科で行っている研究教育活動で行っている挑戦とリンクしています.

第一に,神戸大学経営学部は, 1902年に創立された神戸高等商業学校を起源とし, MBAも全国に先駆けて国立大学としては初めてとなる1989年に誕生し, 2003年に専門職大学院(現代経営学専攻)として再編成されてきました.神戸大学MBAの特徴は, 年末年始以外ノンストップで走り続ける教育プログラムにあります. これは勤務を続けながら土曜日のみ, 1年半で卒業できるようにするためです. また,授業はプロジェクト形式で提供されるものが中心となり,授業時間以外でのグループワークなどにも多大な時間が費やす必要があります.

それゆえに,神戸大学MBAへの進学は,職場はもちろん,特に子育て世帯である30代を中心とした学生にとっては,家族に対する理解も必須となっていたわけですが,潜在的にワーク・ライフ・コンフリクトが課題として残され,家族に対しても「後ろめたさ」を感じてきたことは,かつてより指摘されてきたことでした.昨今の働き方改革のもとでこうした状況を放置することは,神戸大学MBAを志す優秀な社会人を取りこぼしてしまうだけではなく,ワーク・ライフ・バランスの重要性を論じてきた経営学を教える大学としても放置すべき課題ではありません.

そして,この問題は,神戸大学MBAに限ったことではなく,教職員や学生,さらに近隣に住む地域の方についても同様です.神戸大学経営学研究科の教員は,地域と連携した研究教育活動にも積極的に関わってきた実績を有しております.  本研究プロジェクトは,社会課題の解決に挑む地域団体とも連携しながら,地域に対して幅広く提供する体験型の環境教育プログラムの開発を目指します.

第二に,経営学研究科には,多様なバックグラウンドを持つ学生が存在することです.具体的には,まず,神戸大学MBAに通う社会人大学院生です.彼らは,豊富な実務経験を持つことはもちろん,博士号を取得している専門性を有した学生も少なくない.また,一学年69人の定員のうち,30代を中心としており,自らも子育て世帯の学生が多く,子ども向けの地域連携活動に対して十分な理解と参加意欲を持っています.さらには,同窓会組織であるMBAカフェも,現役MBA学生をバックアップしようとする熱意を持っていることから,本研究プロジェクトを積極的に支援してくれることでしょう.

社会人大学院生ばかりではありません.本学の一般大学院生も, 本研究プロジェクトに積極的に参加します.神戸大学経営学研究科・経営学部は, 「学理と実際の調和」という建学の理念の下, 神戸高等商業学校の伝統ある系譜を汲み, 産学連携をとりわけ強く意識しつつ産業界をリードする人材の養成を手がけてきました. 経営学という学問領域の特性もあり, 研究者は企業等での最先端の事象を取り入れ実証研究を行い, 産業界はその研究成果を企業活動に活用できるというように両者が一体化され, 運用される工夫が着実に積み重ねられてきました. こうした学界と産業界の連携は, 本研究科の目指す産業社会との相互協力と相互批判を通じて研究を進め, その成果を学内外で教育するとともに社会還元していくという「オープン・アカデミズム」という理念によって端的に表現されています(神戸大学大学院経営学研究科・経営学部ウェブサイトより). 本研究プロジェクトは, 本学が目指す経営学研究の新たなプラットフォームになるでしょう.

第三に,地域創生と観光経営研究教育センターが連携大学院講座として提供する演習科目および対話型ビジネス価値共創人材養成プログラム(BVCCプログラム)の教育プログラムによって,産学連携ないし大学発の起業家育成を本気で目指すことです.学生イニシアティブで推進していくこどもMBAですが,学生に任せきりで収益につながるツーリズム商品の開発につながるわけではありません.そのためには,しっかりとした産学連携とこれを支援する授業や演習科目の提供が必要になるでしょう.翻って,こうした支援ができることが,大学の強みでもあります.

地域創生と観光経営研究教育センターでは,こうした学生のチャレンジの支援につながる多様な授業科目を用意しています.まず,2025年7月23日には,地域創生と観光経営研究教育センター初航海シンポジウム「クルーズ船「飛鳥」で仕掛ける地域イノベーションの新たなスキーム:企業家,地域金融そして大学は何ができるか」を開催し,経営学部の全1年生ほか,多様な学生に対して基本的な考え方を伝えます.他にも,本センターは,連携大学院として演習科目を開講し.サステイナブル・ツーリズムで著名なクイーンズランド大学(オーストラリア)の研究者が,産学連携事業のハッカソンとして並走する演習プログラムの開講も予定しており,授業を通じてこどもMBAで生まれた成果をツーリズム商品として開発していく体制が整えていくことになります.

また,経営学研究科では,令和5年度にBVCCプログラム(文部科学省・人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業「地域/社会課題を解決する対話型ビジネス価値共創人材養成のための価値創発から社会実装までの一貫教育プログラム」)が採択され,令和7年度には地域創生と観光経営研究教育センターが立ち上がり,地域課題の解決に向けた活動を行う団体や個人とのネットワークを構築してきました.地域創生と観光経営研究教育センターはBVCCプログラムとも連携し,学生自身による起業への支援を含めた独自のカリキュラムを提供していきます.

今後の活動のご案内方法

こどもMBAで行われるイベントは, 地域創生と観光経営研究教育センターのFacebook, 及び今後アカウントの開設を予定しているこどもMBAのInstagramにてご案内させていただきます. こどもMBAの活動にご興味のある方は是非アカウントをフォローしていただけたらと思います.