「企業価値経営」という言葉を耳にしたことがあると思います。いろいろな意味づけがなされていますが、一言でいえば企業価値を意識した経営ということです。それが今の日本の企業経営に求められていると喧伝(けんでん)されても、どこか理念的で日々の事業活動とは直結しない、つまり、具体的に何を実践すれば企業価値の向上に結びつくのかがピンとこないというのが、みなさん正直なところではないでしょうか。これまでの黒字経営や利益拡大の取り組みとは、いったい何が違うのでしょうか。
まず、黒字経営だけでは企業存続の条件を満たさないことは、世の中に黒字倒産があること、しかもそれが珍しい現象ではないことが端的に表わしています。
もし、あなたが独立して事業を始めようというなら、「仕入れと経費がこれぐらいで、売上げはこれぐらい見込めるから大丈夫」という目算で走り出しませんか。また、あなたが会社の財務担当者なら、同じように「売上げから原価と経費を引いてプラスだから安心」という事業の見通しをたててはいませんか。そこには大きな落とし穴があります。会社が存続するためには、黒字だけではだめなのです。「現金収支」すなわちキャッシュフローを見落とすと、成長はもとより存続も危ぶまれるのです。それでは、将来のキャッシュフローはどうすれば見通すことができるのでしょう。
本ワークショップでは、その方法を身につけるために、独立起業を決意した二人をモデルに、設立(事業計画の立案)から5年後の事業の価値算定(企業価値評価)に至るまでをみなさんと一緒に一歩ずつ歩んでいきます。
第1部では、まずキャッシュフロー計算書にたどりつくまで、順を追って事業計画をたててもらいます。次に、その事業計画について、「在庫商品が思ったよりはけない」「仕入代金の支払期日を先延ばししてもらえた」というふうに、条件が変ったら、最初の計画がどのように変化するのかをシミュレーション体験してみます。
そして実は、キャッシュフローがはじき出せれば、その事業の値段がわかります。事業がキャッシュフローを生み出す力、それがすなわちその事業の価値(企業価値)だからです。第2部では、前述の二人の会社が5年後にどのぐらいの値段がつくのかを計算してみましょう。事業の価値がわかれば、事業売却などのM&Aや株式上場も視野に入れることができます。
ここまでくれば、財務データを利用して他社の経営分析を行うこともお手のものです。
そこで最後に第3部では、具体的な上場企業を例にとって財務分析を行い、他社から自社を知り、経営戦略に生かす実践力を身につけます。
本ワークショップのねらいは、会計・財務の専門家でなくとも、企業経営に携わる皆さんに将来のキャッシュフローまで織り込んだ事業計画をたてられるようになってもらうことです。そのために、電卓だけで計算できるワークシートを用意しました。ぜひ、手を動かしてチャレンジしていただきたいと思います。また、受講者の皆さんに企業価値経営の領域にまでくじけず上がってもらえるよう、事業計画から企業価値の分析までを一連の流れにしてあります。本セミナーにご参加いただくことで、新たな視野が広がることでしょう。
事業計画を作る力は、起業のみならず、事業の成長戦略や再構築戦略をたてる上で欠かせません。多くのビジネスパーソンに事業戦略家の視点を身に着けていただき、企業価値経営を実践していただければ幸いです。 |