本講義の概要と目的

本講義では、地域活性化を担う活動をしているゲストスピーカーをお呼びし、地域創生と観光経営に関する知見を深め、地域創生ツーリズムとも呼ばれる新しい観光のあり方について考えていきます。

日本が人口減少社会に本格的に突入していている中、各地域が主体となって持続的な発展に取り組むことが求められています。本講義では、地域に根差した活動をされている起業家や彼らを支援する地域金融機関からゲストスピーカーをお呼びし、地域の社会課題に対してどのように取り組むかについて学んでいきます。そして、ゲストスピーカーから得られた知見をもとに、学生自身の関心のある社会課題に基づき、新たな地域創生や観光経営のあり方を考案することを目的とします。

各回の授業の模様につきましては、ひと月ごとにアーカイブを作成し、HP上に公開してまいります。

4月に開講された授業の内容

第1回(4/8)アンカーシップの取組み~観光と文化、そして金融が果たす地域創生のエコシステム

【講演者:松嶋登(神戸大学大学院経営学研究科教授)・篠田哲郎(アンカー・シップ・パートナーズ株式会社代表取締役社長・神戸大学客員教授)】

第1回では、当講義の発起人であるベンチャー企業創業者が、事業を通じて知り得た地域経済の課題と活性化に向けた取り組むべき施策について講師として伝えます。

なぜ「地域創生と観光経営」が大切なのか、豪華客船「飛鳥」が観光経営に有効なのか、地域金融機関(地銀)の役割りがどれほど大切なのか、善き未来へのヒントとなる発想や具現化手段とは、そして「成功する」とはどのようなことなのか。

世界が憧れる日本には全国各地に様々な魅力が育まれています。あるものは有名になり、ただあるものは宝として埋まったままでもあります。

その魅力を発掘して伸ばすのも、あるいは放置するのも関わる人の意欲と発想次第なのです。

「エフェクチュエーター」を自認する講師が自らの様々な取組みを通じた体験を紹介しながら、実例を通じて分かりやすく伝えます。

2回(4/15)人口減少社会と地域における社会課題

【講演者:柴崎健(SBI大学院大学教授・神戸大学客員教授)】

第2回では、今後の地域創生や観光経営を構想する上で不可欠となる金融経済のマクロ環境について解説します。

日本は世界に先駆けて少子高齢化が進んでおり、早ければ2070年には人口が8,000万人台まで減少し、第二次世界大戦前の水準にまで後退するという予測もあります。このままでは、地方経済が深刻な危機に直面するのは自明の理です。こうした厳しい現状を前提に、日本経済はどのような課題に挑戦すべきなのでしょうか。

その鍵は、社会課題の解決を目指すサステナビリティ社会の実現と、人々のウェルビーイング(幸福)を向上させる価値創造にあります。そして、これらを具現化するための強力な手段となるのが金融の力です。金融の本質とは、目に見えない無形の価値を具体的な形へと変換することにあります。本講義では、地方創生に向けたリスクマネーがどのように供給されているのか、多様な事例を通じて紐解いていきます。

これから新しい事業プランを考えるとき、事業を大きく加速させるとき、金融の力を活用したいとき、今回の講義が少しでもヒントになれば幸いです。

第3回(4/22)加古川生まれの実業家 トイトマの山中社長が語る起業と再生、観光と地域創生

【講演者:山中哲男(株式会社トイトマ代表取締役社長)】

第3回では、事業開発の専門家である山中哲男氏を講師に迎えます。

山中氏は、丸亀製麺の海外進出支援や、年間40万人以上が訪れる淡路島のエリア開発「フロッグスファーム」を指揮するなど、数々の構想を現実のビジネスへと変えてきました。

本講義では、構想をいかに事業化するかという0から1の視点に加え、地域開発における地域の未来を考えたファイナンススキームや所有と運営を紡ぐ戦略など、実戦的な知見を学びます。

情報を完成形ではなく未来を創る材料と捉え、自ら時代を切り拓いていく経営思考に触れる貴重な機会です。

5月に開講された授業の内容

第4回(5/8)福岡発 日本最大の地域金融リーダーが目指す新しい地域金融と地域の姿【講演者:五島久(ふくおかフィナンシャルグループ代表取締役社長CEO)】

本講義では、ふくおかフィナンシャルグループ代表取締役社長 CEO 五島 久氏を講師に迎えます。

「これからの地域金融機関の新しい姿とは?」という問いをテーマに、理念・戦略・事業を結びつけ、実現をめざす姿を、実例を通じて学びます。

また、AIなどの技術革新が進む時代において、最後に問われることになる「人の力」など、これからの時代に求められる力や、企業が持続的に成長し続けるための考え方についても触れていきます。

後半ではトークセッションを予定し、五島氏の実体験やキャリア観を通じ、普段は触れることのできない経営者の思考を学びます。

第5回(5/13)資源循環で森と人との関係を取り戻す:神戸市の取り組み【講演者:黒田慶子(神戸市副市長・神戸大学名誉教授)】

神戸の森林は市域の4割を占め、その大半は里山の広葉樹林です。燃料や肥料(落ち葉)への利用がなくなり、放置による荒廃が進みました。一方グローバルには温暖化対策や持続可能な社会を目指し、Nature positive、Nature-based solutionsという考え方が広がっていますが、表面的な取り組みに留まるのが現状です。神戸市では「人と森との関係を取り戻す」、つまり森林を木材や観光資源として循環的に利用しつつ、自然災害の防止や生物多様性の保全を進めます。講義では、持続する社会の実現(SDGs)には循環型経済が重要であることをお話しします。

第6回(5/20)定住でも観光でもない、新しい地域との関わり方【講演者:田中輝美(島根県立大学地域政策学部准教授)】

人口減少時代の地域づくりのキーワードと言われる関係人口について、なぜ生まれたのかという社会背景や現代的意義などを、島根県における地域創生の取り組みを通して体系的に学びます。人口の減少を解消すべき問題として捉えるのではなく、人口減少時代における持続的なまちづくりを考えることが重要であること、そのためには地域外の仲間と一緒にチームを作ることが重要であることをお話しします。

第7回(5/27)エフェクチュエーションと地域創生【講演者:吉田満梨(教授神戸大学大学院経営学研究科教授)・大野 佳祐氏(一般財団法人 島前ふるさと魅力化財団 常務理事)】

不確実性の高い状況で、予測ではなく手持ちの資源や関係性を活かして未来を共創する「エフェクチュエーション」の概要を踏まえたうえで、一般財団法人 島前ふるさと魅力化財団 常務理事の大野佳祐氏をゲストにお迎えし、島根県海士町における教育魅力化、関係人口との共創、新規事業創出の実践事例を通じて、地域創生における実効的な行動の生み出し方を考えます。

6月に開講された授業の内容

第8回(6/3)徳島発 金融リーダーが地元で取組む、人/地域/社会を笑顔で満たす未来への挑戦【講演者:坂東豊彦(徳島大正銀行頭取)】

再生可能エネルギーを中心とした環境ビジネス市場の急成長や人口減少など、地域経済を取り巻く環境が目まぐるしく変化する中で、地方銀行の役割も大きく変化しています。本講義では、徳島大正銀行が現在取り組んでいる、蓄電池事業への参入や企業版ふるさと納税の活用といった、地域活性化を支援する取り組みについて紹介していきます。

第9回(6/10)「人間国宝」室瀬和美先生が若者に語る~千年の技を未来へ、そして世界へ~【講演者:室瀬和美(重要無形文化財保持者:人間国宝)】

東洋の奇跡といわれる漆の樹液を用いた文化が、数千年の歴史を経て日本の美を築き上げて来ました。漆芸の中で日本で千年以上前に生まれて独自に育ってきた蒔絵は、現在日本を代表する工芸の一つであり、近年では海外からの関心も高まっている分野と言えます。

本講義では、この漆文化と蒔絵の視点から、日本の漆(工芸)に関する古代からの歴史と特徴や、サステナブルな漆文化についてお話ししていきます。

第10回(6/17)辣腕PEファンドマネージャー講義 企業再生と国/地域創生【講演者:新名孝至(元ジェイ・ウィル・パートナー取締役パートナー)】

講師に、地域企業の事業承継・事業再生の専門家である新名孝至氏を迎えます。新名氏はPEファンドの立場で、200社を超える地域企業の事業承継や、ビッグモーター・ジェネリック製薬会社の日医工などの事業再生を主導するなど、数々の地域企業のバリューアップを成し遂げてきました。

本講義では、PEファンドの基本的な仕組みやこれまでの実績を通して、PEファンドがいかに地域金融機関と協働しながら社会課題の解決に貢献してきたか、実戦的な知見を学びます。目の前にある社会課題に対し「全て自分でやり遂げられるか」と常に自分と対話しながら、全て「我が事」として問題解決を図っていくという経営思考に触れる貴重な機会です。

第11回(6/24)狩猟が切り拓くハイイールド・ツーリズム:多面的な社会課題を解決する獣害対策のあり方【講演者:安田大介(猪鹿庁合同会社代表・猟師)】

『狩猟採集的 幸福仕事論 〜大変、だけど依存しない、自由で楽しい働き方〜』と銘打ち、狩猟をテーマとした講演を行います。

大きく風呂敷を広げるのではなく、学生の皆さんに、自分事として狩猟を捉えていただきつつ、

狩猟に限定せずに、複業的、主体的な働き方について考えるきっかけになればと考えております。

7月に開講された授業の内容

第12回(7/1)人が集まる場をデザインする【講演者:岡雄大(株式会社Staple/GOOD SOIL株式会社 代表取締役)】

本講義では、ホテルを核とした地域再生のアプローチに加え、投資・開発・運営を一気通貫で担う垂直統合モデルや、地域に資金循環を生む仕組みなど、実践から生まれた知見を学びます。

人口減少という課題を前提としながら、旅の目的地と豊かな生活圏を同時に育てる経営思想に触れる機会です。

第13回(7/8)民間と行政のハブとして生み出す観光まちづくり【講演者:長谷川英一(福井銀行代表執行役頭取)】

本日は福井銀行頭取の長谷川英一先生にご講演いただきます。長谷川氏は頭取就任後、数々の経営改革を実現するとともに福邦銀行との合併を主導し、福井県の地域活性化に奔走してきた方です。「地域金融機関の仕事は地域創生そのもの」と喝破する経営哲学と、伝える力に重きを置く考え抜かれた明快かつ奥深い言葉の数々から、組織を動かし、事を成し遂げる極意を学びます。

 

第14回(7/15)石川発 金融リーダーが進めるDXによる金融変革と地元リメイクプラン【講演者:杖村修司(株式会社CCIグループ代表取締役社長)】

北國銀行を傘下に持つCCIグループを率い、デジタル・AI・投資等を軸に改革を進める、杖村氏が登壇します。 

本講義では、「預金・融資・決済」という従来の銀行ビジネスモデルを超え、AI・システム・コンサル、そして、投資を融合させた新たなプラットフォーム戦略の実態を学びます。

地域課題の解決に向けて、個別の効率化のみならず、組織や地域全体の最適化、すなわち合成の誤謬の排除をどう設計するのかを考えます。

さらに、今後の日本経済の鍵となる人的資本や投資の本質についても触れ、これからの時代を生き抜くためのキャリア観を提示。従来の銀行ビジネスの枠組みを超えたプラットフォームと、その意思決定の実践例に触れる機会をお届けします。