責任という倫理 不安の時代に問う

 

著者名 國部克彦、後藤玲子(編著)
タイトル 『責任という倫理 不安の時代に問う』
出版社 ミネルヴァ書房 2023年8月
価格 4180円 税込 

紹介

国際紛争、経済格差の拡大、そしてパンデミック。文明社会が容易に解答を見出せない問題に直面するなか、求められている倫理とはどのようなものなのだろうか。本書はこの問いに応答するための鍵概念として「責任」に着目する。リスク社会、政策決定、政治過程、隣人、公平、ジェンダー、企業といった領域に生じている問題を分析するなかで、「責任」という手垢のついた概念を再検討し、時代に対応した形に鍛えなおすことで、問題解決への糸口を探っていく。新たな時代の倫理を示す、総合的研究の成果。

目次

序 章 現代的な不安と責任という倫理(國部克彦)
 1 はじめに
 2 思考の根拠としての責任
 3 責任という倫理
 4 本書の構成
 5 おわりに

第1章 リスク社会における責任と倫理――混乱を克服するために(國部克彦)
 1 はじめに
 2 リスク社会としての近代
 3 システムでリスクに対処することの限界
 4 有限の責任から無限の責任へ
 5 全体主義下での責任
 6 責任を起動するための信念の倫理
 7 おわりに

第2章 許容可能なリスクの責任ある決定――費用便益分析と契約主義(瀧川裕英)
 1 はじめに
 2 費用便益分析
 3 契約主義
 4 責任ある決定
 5 おわりに

第3章 公共政策と責任――コロナ禍の政策過程(山本清)
 1 はじめに
 2 政策構造・立案と責任
 3 政策過程と責任
 4 政策執行と責任
 5 我が国を対象とした実証分析
 6 合理性と責任の関係――不安と不信の連鎖を解くには
 7 公共政策としての学習と責任
 8 おわりに

第4章 隣人への責任――ケイパビリティと「外出自粛」(後藤玲子)
 1 はじめに
 2 「外出自粛」ゲーム
 3 非対称モデル
 4 個人の自由への権利とパレート効率性の矛盾
 5 「外出自粛」の公共的ルール
 6 おわりに

第5章 責任の基盤としての自制――アダム・スミスと「公平な観察者」(金森絵里)
 1 はじめに
 2 現代に生きるアダム・スミス
 3 本章における責任
 4 「新アダム・スミス問題」研究の進展
 5 良心と自制
 6 おわりに

第6章 ジェンダー正義への責任――ロールズ「財産所有のデモクラシー」の可能性(神島裕子)
 1 はじめに
 2 「財産所有のデモクラシー」とは何か
 3 個人的財産を保有する権利
 4 財産所有のデモクラシーにおける家族
 5 おわりに

第7章 企業の社会的責任の展開――レスポンシビリティを組み込むために(國部克彦)
 1 はじめに
 2 二つの責任概念――アカウンタビリティとレスポンシビリティ
 3 ISO二六〇〇〇にみる責任の概念
 4 レスポンシビリティの立ち上げ方
 5 レスポンシビリティが創発する場の設定
 6 レスポンシビリティの割り当て方
 7 SDGsにみる無限責任と有限責任の組み合わせ
 8 おわりに

終 章 責任という倫理が成立する条件(後藤玲子)
 1 はじめに
 2 ロールズ正義理論における偶然性と責任との緊張関係
 3 責任の社会的分配
 4 過少とされがちな企業や国家の責任――二つの事例より
 5 責任の構造と「個人的必然化」への圧力
 6 偶然性の認識と責任
 7 公共的相互性の論理と倫理――事後補償によるインセンティブ問題をいかに回避するか
 8 おわりに