伊賀隆賞、第13回が授与されました

伊賀隆賞は、1971年から1990年の19年にわたり神戸大学経営学部経営数学講座の教授として経営数学分野の教育研究に尽力された伊賀隆先生を記念し、神戸大学大学院経営学研究科において経営の数理・数量的研究の分野で優れた研究成果をあげた学生を表彰するものです。伊賀隆先生が2013年2月に亡くなられたおりにご遺族から神戸大学大学院経営学研究科の発展のためにとのご寄付がありましたので、一周忌にあたる2014年3月にこの賞を創設して、毎年課程博士号を授与される学生のうち賞の趣旨に該当する学生があれば1名を選んで表彰し、ご遺族の寄付を基金として副賞を贈呈することにしました。

第13回伊賀隆賞は、「デマンド型交通における予約システムの設計:予約締切時刻と送迎順序に着目して」の題目で、交通経営の分野で優れた研究を行った後藤佑司さんに授与されました。新しいモビリティサービスの一つに乗客の予約状況に応じて運行ダイヤや経路を柔軟に対応させるデマンド型交通があります。その利便性を改善する目的で予約方法や経路決定方法などのサービスの設計に関して様々な考察がありますが、後藤さんはこれまであまり考慮されてこなかった消費者の選好の異質性を取り入れたサービスの設計を考察しています。消費者の時間価値に異質性があるとすればそれを利用したサービスの設計が考えられるはずです。第3章ではセカンドプライスオークションで送迎順序を割り当てる方式を導入することで一般的な送迎方法と比べて厚生が改善されることを理論的に示しています。また、通常デマンド型交通は事前予約を必要としますが、最適な予約締切時刻は乗客の選好に応じて変わるはずです。さらにその選好は代替交通サービスとの比較により形成されるはずです。第4章ではデマンド型交通と路線バスの相対的な利便性を比較するモデル分析をとおして、特にデマンド型交通がカバーする地理的範囲に関わる特性がいかにデマンド型交通の優位性につながるのかについて検討して幾つかの洞察を得ています。第5章では予約締切時刻に関する表明選好調査を実施し、事前に予約しなければならないことに対する消費者の心理的負担の定量化をすることで、それがどのようなことに影響を受けているかについて詳細な検討をしています。さらに第6章では自家用車を日常的に利用している場合とそうでない場合でデマンド型交通の選好にどのような差があるかについてシステマティックレビューを行うことで今後のサービス設計に対する有益な示唆を与えています。このように、本論文はデマンド型交通に関して様々なアプローチから高い水準の研究をしており、これからのモビリティサービスに洞察を与えるよい研究といえます。

授与式は、2026年3月25日に神戸大学出光佐三記念六甲台講堂で行われた博士号授与式に引き続き、経営学研究科長室で行われました。神戸大学大学院経営学研究科は、経営の数理・数量的研究の分野の優れた教授陣を擁しており、これからもこの分野で優れた研究者を育成し、わが国の経営学の発展に寄与していこうと考えています。伊賀隆賞は、そのような将来有望な研究者に引き続き授与される予定です。

2025年度伊賀隆賞授賞式
左から、國部克彦経営学研究科長、後藤佑司さん