アメーバ経営学 ―理論と実証―
著者名 | アメーバ経営学術研究会 編著 鈴木竜太 著(第6論文) 三矢裕 著(第7論文) |
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タイトル | アメーバ経営学 ―理論と実証― |
出版社 | KCCSマネジメントコンサルティング株式会社 2010年11月 |
価格 | 2940円 税込 |
書評
はじめに、東北地方太平洋沖地震で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に対しまして、この場をお借りして、心よりのお見舞いを申し上げます。
近年、京セラ名誉会長稲盛和夫氏の著書や、JAL再建のための経営手法として関心を集めているアメーバ経営は、1959年の京セラ創業の後ほどなく開発された小集団部門別採算制度である。およそ50年ほどの歴史があるが、その内容は長らく社外秘とされてきた。同社が1989年にアメーバ経営のコンサルテーション事業を開始し、手法は公開された。加護野忠男前神戸大学教授の働きかけもあり、1990年代の半ばにアメーバ経営は学会にも門戸開放された。当初は神戸大学のグループが研究の中心であったが、近年では一橋大学や京都大学のグループでも異なるアングルから素晴らしい研究が行われるようになった。そして、2006年、産と学、また各大学の研究グループ間のコラボレーションをさらに活発化すべく創設されたのが、アメーバ経営学術研究会である(初代の委員長は廣本敏郎前一橋大学教授、現委員長は谷武幸神戸大学名誉教授)。
学術研究会メンバーのこれまでの研究をまとめた論文集が本書である。各論文の内容は以下のタイトル一覧から判断していただくとして、この本の重要な特徴はアメーバ経営について、(十分条件ではなく、必要条件として)次の通り、学術的定義を定めたことにある。「アメーバ経営とは機能ごとに小集団部門別採算制度を活用して、すべての組織構成員が経営に参画するプロセスである」。すなわち、上意下達やトップからのモニタリングのためだけの小集団の部門別採算が行われるのであれば、それはアメーバ経営とは呼ばれない。必ず小集団の長には会計上の責任、十分な情報フィードバック、経営判断を行う権限が移譲されねばならないということを意味している。定義は今後、アメーバ経営の手法自体が進化すると修正が必要になるかもしれないが、この時点で明確に定義を示したことで、これからこの手法あるいは近似した手法の研究が促進される際のガイドとしてほしいという願いがこめられている。
なお、神戸大学所属および神戸大学出身の研究者は、第6、7、8論文を執筆していることもお知らせしたい。これらの論文はすべて本家の京セラ
末筆ながら、この日本で生まれた優れた経営システムは、日本の資産である。単なる計算構造のインストールだけでなく、これを稼働するには大家族主義的な経営理念や、他利を重んずる組織文化が必要である。また、今回の大災害の現場でも見られるように、最前線でトラブルの真っただ中にあっても、勇気を出し、なんとか知恵を集めて問題を解決しようとする「普通」の人たちのリーダーシップが不可欠である。日本人、日本の企業だからこそ、アメーバ経営という無形の資産の価値を最大限に生かせるはずである。当研究会の研究成果が、大きく傷ついたこの国の人々の物心両面の幸福を回復し、産業の復興への一助となれば、これ以上の喜びはない。是非、ご一読いただきたい。
タイトル一覧
特別講演録
•「アメーバ経営はどのようにして誕生したのか」 稲盛 和夫氏 (京セラ株式会社 名誉会長)
アメーバ経営の学術定義
研究論文
●第1論文 「アメーバ経営研究序説」
廣本敏郎氏(公認会計士・審査会常勤委員 前一橋大学大学院教授)
挽文子氏(一橋大学大学院教授)
●第2論文 「アメーバ経営の仕組みと全体最適化の研究」
上總康行氏(京都大学名誉教授、福井県立大学特任教授)
●第3論文 「賢慮を生み出すアメーバ経営」
澤邉紀生氏(京都大学大学院教授)
●第4論文 「京セラ・アメーバ経営における時間当り採算の歴史的形成過程についての研究-時間当り採算の「年輪」を読む-」
潮 清孝氏(中京大学講師)
●第5論文 「アメーバ経営と原価計算」
尾畑 裕氏(一橋大学大学院教授)
●第6論文 「マネジメントシステムとしてのアメーバ経営:R.リカートによるシステム4 との比較を通じて」
北居 明氏(大阪府立大学教授)
鈴木 竜太氏(神戸大学大学院准教授)
●第7論文 「アメーバ経営の導入:アクテックの事例」
三矢 裕氏(神戸大学大学院教授)
●第8論文 「アメーバ経営導入による被買収組織変革-チェンジ・エージェントの役割-」
谷 武幸氏(神戸大学名誉教授)
窪田 祐一氏(大阪府立大学准教授)
●特別寄稿 「アメーバ経営と連結管理会計」
森田直行(KCCS マネジメントコンサルティング会長兼社長)