日本のキャリア研究:組織人のキャリア・ダイナミクス、専門技能とキャリア・デザイン

著者名 金井壽宏 鈴木竜太 編著
タイトル 日本のキャリア研究:組織人のキャリア・ダイナミクス
出版社 白桃書房  2013年8月
価格 3990円 税込
著者名 金井壽宏 鈴木竜太 編著
タイトル 日本のキャリア研究:専門技能とキャリア・デザイン
出版社 白桃書房 2013年8月
価格 3675円 税込

書評

これらの2冊は、日本企業ならびに日本で働く人々を対象としたキャリア研究の書籍であり、金井壽宏ともうひとりの編著者の鈴木竜太を含む門下の研究者のこれまでのキャリアに関する研究をまとめた姉妹書です。両書籍とも、タイトル通りキャリアに関わる研究が所収されています。まず組織人のキャリア・ダイナミクス編は、日本企業に勤める企業人を対象とした研究が所収されています。また、専門技能とキャリア・デザイン編は、日本における専門技能をもった専門職を対象とした研究が所収されています。

1995年前後、ちょうどバブル景気が終わったころから日本人の働き方に対する考え方が変わってきました。就職というよりも就社と言われたように、それまで会社に入社し、そこで企業とともに仕事人生を送るという時代から、自分で自分のキャリアを考えねばならぬという時代へと変わってきました。本書の編著者の1人である金井がキャリア研究に重点的に取り組み始め、積極的に発信を始めたのもこの頃になります。そしてその後、金井と金井の門下によって日本を対象としたいくつものキャリア研究が多様な形でなされてきました。本書は、これらの研究を束ねたものです。

日本の会社に勤務する人びとは長らくある種のステレオタイプで語られることが多かったと思います。それは、組織人と呼ばれる日本企業に勤めるいわゆるサラリーマン、あるいは職人気質をもった職人です。我々は、企業に勤める企業人の心的態度やキャリアが多様であること、そして日本にも多くの専門職人がいることを知っています。本書を読むと、キャリア論という窓から、日本の企業人あるいは専門職人の多様な職業世界、ならびに仕事観を見る事ができるのではないかと思います。そして同時に、欧米で発展したキャリアに関わる概念や枠組みが、日本というフィルターを通してどのように解釈され、新たな視点が加えられてきたのかを理解できます。

これらの2冊の執筆に貢献してくれた著者たちは皆、多種多様なキャリア論文が、以下のような方々に読んでいただけることを期待・希望し、研究成果を上梓させていただきました。

  1. キャリアをより意味ある形で歩みたいと思っておられる方々、
  2. 人事部でキャリアの問題に取り組んでおられる方々、
  3. 個人的にキャリア・カウンセラーやキャリア・アドバイザーとして活躍している方々、
  4. また、院生を含むキャリアにまつわる研究者の方々。

    目次
    『日本のキャリア研究:組織人のキャリア・ダイナミクス』
    第1章 キャリア発達における時間展望(尾形真美哉・金井壽宏)
    第2章 組織と個人とキャリアの関係(鈴木竜太)
    第3章 心理的契約と組織コミットメントの変化(服部泰宏)
    第4章 仕事による経験学習とキャリア開発(谷口智彦)
    第5章 職務設計がもたらすメンタリング行動(麓仁美)
    第6章 人材育成方針がもたらす若手従業員への影響(小川憲彦)
    第7章 上司・同僚・同期による組織社会化プロセス(尾形真美哉)
    第8章 管理職への移行におけるトランジション・マネジメント(元山年弘)
    第9章 キャリア発達課題がちりばめられたリーダーシップの旅(金井壽宏)

    『日本のキャリア研究:専門技能とキャリア・デザイン』
    第1章 船舶職員候補生のスキル習得(小川千里)
    第2章 看護師のプロフェッションフッド(勝原裕美子)
    第3章 芸舞妓のキャリア形成(西尾久美子)
    第4章 ハイテク産業における研究開発者のキャリア・ラダー(田路則子)
    第5章 アイデンティティを活かすキャリア形成(森永雄太・金井壽宏)
    第6章 ホテルワーカーの職業的コミュニティとキャリア形成(上野山達哉・山下勝)
    第7章 フリーランス・クリエイターのキャリア戦略とコンテンツ産業の構造(宇田忠司)
    第8章 シャイン教授のキャリアと創造的機会主義にもとづくキャリア論(金井壽宏)