イノベーション戦略の論理

著者名 原田勉 著
タイトル イノベーション戦略の論理
確率の経営とは何か
出版社 中央公論新社 2014年3月
価格 760円 税別

書評

本書は、いわゆる経営戦略に関する多くの著作物に見られる一般的傾向、すなわち、①結果の事後正当化、②実質的な不確実性の排除、③組織能力活用型戦略と組織能力構築型戦略の混同、に対するアンチテーゼとして執筆したものです。この本では、イノベーションがテーマです。しかし、イノベーションの成功確率はきわめて低く、しかも、社会的にインパクトの大きなイノベーションの大半は、「社長以外全員反対」というなかで遂行されたものです。これらを勝てば官軍方式の結果の事後正当化で評価することは危険です。理にかなったことで成功したのであればよいのですが、理にかなわないことで成功した場合、理にかなっていない部分が後々修正されることなく保持されるからです。大切なのは「理」を見きわめ、それにかなった方法でイノベーションに取り組むことです。本書では、その論理を「イノベーション確率最大化基準」と呼び、その具体的内容を指摘しています。プロ野球はしばしば「確率の野球」と呼ばれます。たとえば、配球で重要なのは、打者のデータをもとに、打ち取れる確率の最も高いコースと球種で攻めることです。このような確率最大化の「理」が一貫していればそれはOKです。しかし、その「理」が曖昧で、たまたま打ち取れた、というのはダメなのです。イノベーション戦略も同様です。その成功確率、すなわち、イノベーション確率が最大化されるかたちで戦略、組織、仕組みなどが整備されていたかどうかこそが問われるべきなのです。本書は、このイノベーション確率最大化基準という新たな視点から、イノベーション戦略や組織について論じています。

目次

第1章 確率の経営―イノベーション確率最大化基準
第2章 イノベーション確率とは
第3章 イノベーション・ドメインの設定―探索領域を決定する
第4章 探索のデザイン―探索の頻度と精度を高める
第5章 探索の焦点を管理する
第6章 イノベーション戦略の実行―活用から構築へ