「このままでいいのか」と迷う君の明日を変える働き方

著者名 金井 壽宏 著
タイトル 「このままでいいのか」と迷う君の明日を変える働き方
出版社 日本実業出版社 2014年3月
価格 1400円 税別

書評

モティベーションの問題を、できる限りわかりやすく、また実践につながる形で学んでいただくことを目的に書かれたのがこの書籍です。わたしは、これまでも、モティベーションに関わる著作を書いてきましたが(たとえば、『働くみんなのモティベーション論』NTT出版、2006年)、そのときには、ワークモティベーション(仕事意欲)の諸理論を体系的に紹介することを目的としました。

これと並行して、リーダーシップについてもいくつかの書籍を書いてきました。しかしながら、いま、いちばん大事に思っているのは学者の理論を学ぶだけでなく、それらを参照しながらも、自分がリーダーシップ行動を効果的に発揮して、行動においてぶれなくなるための基軸が必要だと確信するようになり、その基軸を、リーダーシップ「持論」と呼びました。学者が体系的に構築する理論に対して、リーダーになる人が、実践の場で自分のリーダーシップ行動を導く軸のようなものが言語化されており、それがあるおかげで、行動がぶれなくなるときに、それをリーダーシップ持論と呼びました。

その後、モティベーションに関しても、わたしたちは、大学の講義や書籍で、モティベーションの理論を学ぶ前から、学生さんの場合でも、20年も、遊びや勉強、趣味に打ち込んできたのなら、自分なりのモティベーションの持論をもっていてもおかしくないのではないかと思うようになりました。決定的な文献との出会いは、キャロル・ドゥウェックという学者が提唱した、セルフ・セオリーという理論でした。彼女によれば、がんばるひとは自分なりのモティベーションの実践理論をもっており、それをセルフ・セオリーと呼びました。NTT出版の書籍は、あまたあるモティベーションの理論を、自分なりのモティベーション持論を言語化するための試みとして、既存の理論を体系的に紹介した書籍でした。

しかし、今回は観点をかえて、働く若い方々14名の、やる気にかかわる生の声にしっかり耳を傾けることから、自分の働き方をモティベーションという側面から内省して、意味づけることを試みました。帯にも書いていただきましたが、自分のやる気を自己調整するためだけでなく、管理職になる前でも、自分とともに働いてくれる若手と共同する機会が増えたときに、やる気という観点から、若手にポジティブな影響を与えたいと思うひとにヒントとなる書籍を目指しました。若いひとたちをモティベーションとういう観点から元気づける達人でもある、サイバーエージェントの人事部のリーダー(人事本部長)の曽山哲人さんが、この書籍について「悩んでいる人と相談に乗る人の、必読書」という推薦の言葉を寄せてくださったのは、うれしく、適切な表現に感銘しまいた。自分のやる気を自己調整することも大事ですが、若いひとたちのリーダー格になることには、自分が元気である(かのジャック・ウェルチの言葉では、「エナジー」あふれるひとになる)だけでなく、その若手たちを元気づける(同じくウェルチの言葉では、「エナジャイズ」できるひとになる)ことも重要です。モティベーションという点からよいリーダーシップを発揮するうえでは、身近にいる若手が困っているときに、やる気という観点から支援できるひとになるヒントを平易に書こうとしてののがこの書籍です。14人の生の声とその解釈をお楽しみください。ついつい(わたしもそうですが)学者が書きがちの理論ばかりの書籍よりも、読みやすく、とっつきやすい実践的なモティベーション論に、これまでのわたしのモティベーションの書よりも近づけていれば、著者として望外の喜びです。

目次

はじめに 「このままでいいのか」と迷いながら働く人へ
序 章 「働き方」に迷うとき
「仕事」について考える
誰でも制限の中で働いている
第1章 いったい仕事とは何なのか
日々の仕事に何を求めるか
人を仕事に向かわせるもの
やりたい仕事とお金の関係
第2章 働く20代がぶつかる問題
働く意欲を取り戻すための視点
落ち込みから回復し、一皮むけるには
「よいガマン」と「わるいガマン」
第3章 仕事の面白さを見つける
仕事の「リアル」を掴めるか
「不満」をアピールの原動力に変える
第4章 「会社」としたたかに付き合う
リーダーシップを求められたら
組織と積極的にかかわる
「会社の方針」と「自分の価値観」のすり合わせ
第5章 自分のキャリアを考える
キャリアのコアを見つける
市場価値に踊らされるな
キャリアの迷宮に入り込んだとき
キャリアにはアップもダウンもない
おわりに 働く人の生の声を聞き届ける