小売企業の基盤強化-流通パワーシフトにおける関係と組織の再編
著者名 | 高嶋 克義 著 |
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タイトル | 『小売企業の基盤強化-流通パワーシフトにおける関係と組織の再編』 |
出版社 | 有斐閣 2015年9月 |
価格 | 3500円 税別 |
紹介
小売企業へのパワーシフトがますます強まっている。その顕著な現象が小売企業におけるPBの拡充や大手メーカーによるPB供給であり,さらにメーカーはPBと競合するナショナルブランドの価格競争にも巻き込まれている。他方で,小売企業は,そのパワーを使って,低価格販売だけでなく店舗差別化への貢献をメーカーや卸売企業にますます求めるようになり,メーカーや卸売企業は,店頭シェルフスペースを獲得するための販促提案やPB提案を競い合う状況になっている。
なぜこうした小売企業へのパワーシフトが近年になって強まったのか。その一つの理由が,この本で考察する小売企業の近年における基盤強化にある。つまり,小売企業は,以前にも増して仕入先との関係を管理するようになり,不確実な消費者需要に関する情報処理や品揃えや販促の革新的な試みを店舗において実践できる組織体制を再編している。そのため,小売企業のもてるパワーを一層強め,仕入先に対して有効に使うことができるようになってきたのである。
この本では,小売企業がいかに仕入先との関係を構築・管理し,組織体制を強化しているかをさまざまな視点からの実証分析に基づいて解明して,仕入先との企業間関係や小売企業組織における基盤強化が小売企業へのパワーシフトを促している実態を明らかにする。
ここで明らかにされることは,こうした小売企業の基盤強化が一部の先端的な小売企業だけではなく,日本の小売チェーンの平均的な企業においても浸透していることや,その一方で大規模小売企業になるほど一層の基盤強化を展開していること,そして,こうした基盤強化において小売企業は組織的限界を克服することが重要になっていることなどである。
小売業に従事する人たちにとっては,この本を通じて,ますます厳しさを増す小売市場競争の中で仕入先との関係管理をいかに行うべきか,革新的なMDのために組織をいかに再編すべきかといった知見が得られるものと期待される。
他方で,メーカーの立場においても,こうした小売企業へのパワーシフトを通じて小売企業との関係で何が起きているのかを理解したうえで,ブランド戦略や小売企業へのMD提案のための営業体制を再構築する重要性を理解してもらいたいと考えている。
目次
序章 小売企業の基盤強化
第1部 仕入先企業との取引関係の再編
第1章 パワーシフトと大規模小売企業の優位性
第2章 大規模小売企業の成長志向
第3章 小売企業による依存度管理の展開
第4章 大規模小売企業におけるPB開発
第2部 小売企業の組織的課題
第5章 小売MD革新のための組織構造
第6章 仕入先企業からのMD提案を促す小売企業の組織構造
第7章 小売業務革新の組織的条件
第8章 小売企業におけるPB開発の組織体制
第9章 小売業におけるバイヤーの管理様式の選択
終章 小売業における企業間関係と組織の変化