行動ファイナンス-理論と実証-


著者名 加藤英明
タイトル 行動ファイナンス-理論と実証-
出版社 朝倉書店 2004年4月
価格 3400円 税別

書評

コイン投げをして、表が 3 回続いたとしよう。次は裏の可能性が高いと思ってしまう人はこの本を読むことをお薦めする。正常なコインを使う限り、何回表が出ようと、次に裏が出る確率はやはり 1/2 だからだ。

これまでの経済学は感情を抜きにした合理的人間が、自分の喜びを最大化するように行動することを前提にしてきた。故に、人間行動の心理的側面は全く無視されてきたといってよい。このようなアプローチは、モデルを作るうえで非常に便利であること、あるいは、そのようなアプローチで作られたモデル自体が原則的に正しいことを、経済学者は主張してきた。しかしながら、数多くの心理学の実験、ならびに、実証研究によって、人間行動に対して無制限に合理性を仮定することには無理があるということが明らかにされてきた。行動経済学という新しい領域が生まれてきた所以である。行動経済学が対象としているのは、金融市場、労働市場、法律など多岐に及んでいる。行動ファイナンスは行動経済学の一分野で、人間の合理性が最も発揮されると考えられる金融市場に焦点をあてている。

本書では、新しい分野である行動ファイナンスについて平易に解説を行うとともに、著者の行った実証分析の結果もまとめている。行動ファイナンスという新しい分野についての知識を得たいと考えている人にとっては、格好の入門書となるだろう。

目次

第一部 理論編

1. 伝統的ファイナンスと行動ファイナンス
2. 市場の効率性
3. アノマリー
4. 心理学からのアプローチ
5. ファイナンスへの適用

第二部 実証編

6. 日本市場の実証分析 I
7. 日本市場の実証分析 II
8. 人工市場
9. 新しいパラダイムに向けて