CHO-最高人事責任者が会社を変える


著者名 金井壽宏 守島基博 編著 原井新介 出馬幹也 須東朋広 著
タイトル CHO―最高人事責任者が会社を変える
出版社 東洋経済新報社 2004年5月
価格 2800円 税別

書評

人事部長の役割をあらためて前向きに見直すための試みが本書だ。元々、組織行動(OB、Organizational Behavior)と人材マネジメント(HR, Human Resource)の分野は、愛称のいい2領域だ。組織行動だけだと制度の話を伴わない。組織行動は、人材マネジメントのようにいつも制度上の課題が議論されている分野とつながる必要がある。他方で、人材マネジメントは、もしも制度のテクニカルな話だけに終わってしまったら、知的興奮に欠ける。人材マネジメントは組織行動と結びついてこそ、実践に役立つ理論や測定・診断のツールが豊かとなる。その意味で、組織行動を専門とする第1編著者は、いつも具体の問題としては人事の問題に興味をもってきたし、人材マネジメントを専門とする第2編著者は、自らも組織行動に詳しく、両方を架橋してきた。その意味でのコラボレーションは、かつても一作あった(金井壽宏・守島基博・高橋潔著『会社の元気は人事がつくる―企業変革を生み出すHRM』―日本経団連出版、2002年)が、組織行動と人材マネジメントと、さらに経営戦略とを三つ巴につなげる必要が高まってきた。

そのことを深く意識し、実践に持ち込むことができるニューウェーブの人事部長が要請されていて、それをわれわれはCHO(Chief Human Officer)と名づけた。この問題に実務の立場からも並々ならない関心をもつ原井新介氏、出馬幹也氏、須東朋広氏が、この問題を何度も語り合い、そしてそこで生まれた問題意識に基づいて、この共同執筆者たちに、インタビュー調査と質問票調査を実施してもらった。

われわれは、CHOという新たなタイトルをただ流行のように用いたいとはけっして思わない。戦略や変革と同時に人事の基本をベースに行動できるCHOは、実は原点復帰の発想でもある。この書籍にもまだまだ議論の整理が尽くせていない点があるが、ここでの問題提起を中心に、皆さんが勤務される会社でも、人事部と人事部長の役割、ラインマネジャーの人事面での役割について、意味のある議論がさらに進展していくことになれば、編著者のひとりとしては、そのことをたいへんありがたく思うし、また、それはうれしいことだ。

目次

序章 人事の原点からCHOへ-Get back to the people matter as people matter-
第1章 これまでの人事からこれからの人事へ
第2章 これからの人事がもたらすべきもの: CHO の役割
第3章 人事を評価する-測定できなければはじまらない-
第4章 人事の処方箋-すべては見ることから始まる-
第5章 CHOの機能と役割と証言-チーフ・ヒューマン・オフィサーとは?-
第6章 事業の盛衰と変革への仕掛け
第7章 CHOの育成
第8章 人事マネジメントのバリューチェーンと CHO