株式投資の新しい考え方


著者名 加藤英明 監訳 ロバート・ A ・ハウゲン 著 木元伸行 高橋大志 廣瀬勇秀 訳
タイトル 株式投資の新しい考え方
出版社 ピアソン・エデュケーション 2005年1月
価格 2500円 税別

書評

株式資本の本というと、少ない資本で1,000万円儲ける方法などといった、一攫千金を約束する類のものが多い。自分自身の成功例をもとに、こうすれば必ず儲かるといった論調だが、読んでみると甚だ危なっかしいものばかりである。本書はそういったいかがわしい本ではない。ファイナンスという学問を修めた教授が、自分自身のこれまで棲息してきた世界を概観し、その世界で共通認識だった理論のフレームワークに疑問を呈しながら、新しい投資手法について解説している。ファイナンスの世界では、人間の合理性を仮定したうえで、株価は原則的に正しいので、株式投資からはどんなにがんばってもリスクに見合った以上のリターンは手に入らないと考えられてきた。しかしながら、本書でも紹介されているように、ファイナンス理論にそぐわない価格変動が多くの研究者によって指摘され、90年代以降、新しいアプローチを求める声が大きくなってきている。その1つが本書でも紹介されている行動ファイナンスで、投資家心理に注目し、人間行動の非合理性を含んだモデルを提案している。本書の考え方は、行動ファイナンスをさらに超えて、著者はニュー・ファイナンスと呼んでいる。ニュー・ファイナンスの基本的メッセージは、株価の動きは市場に聞けということだ。実証研究の重要さを協調しているとすれば、それは大切なことで私も大賛成であるが、どうも著者は行動ファイナンスではまだ手ぬるいと主張しているようだ。これまでの理論のフレームワークに黄信号が灯り、新しいフレームワークへの期待が高まるなか、このような極論ともいうべき考え方が提案されてもいいのかもしれない。いつの時代にも学問の進歩はそのような極論の対立から生まれてきたのだから。

目次

第1章 星杯を探せ
第2章 オールド・ファイナンス(古い株式投資の考え方)
第3章 短期とはどれくらいのことをいうのか?
第4章 太古のファイナンス(大昔の株式投資の考え方)
第5章 過去と未来
第6章 割安株と成長株の間のレース
第7章 サプライズかリスク・プレミアムか?
第8章 株式市場でリスクに耐える
第9章 聖杯
第10章 合理的なファイナンス、行動ファイナンス、そして、ニュー・ファイナンス
第11章 結語

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