アントレプレナー・ファイナンス ベンチャー企業の価値評価とディール・ストラクチャー


著者名 岸本光永 忽那憲治 監訳 リチャード・Lスミス ジャネット・Kスミス 著 山本一彦 総監訳・訳 株式会社コーポレート・キャピタル・コンサルティング 訳
タイトル アントレプレナー・ファイナンス ベンチャー企業の価値評価とディール・ストラクチャー
出版社 中央経済社 2004年5月
価格 12600円 税別

書評

本書は米国の経営大学院(MBAスクール)で利用されるベンチャー・ファイナンスの代表的なテキストEntrepreneurial Finance, 2nd edition(John Wiley & Sons Inc ,2003)の日本語版である。これまでもベンチャー・ファイナンスを取り上げた書籍はいくつか出版されているが、その多くは制度、組織、ファイナンス方法のノウハウの紹介が中心であった。これに対して本書は、ベンチャー企業のファイナンスの意思決定をテーマとしており、企業価値評価とディール・ストラクチャーのフレームワークの構築に焦点を当てている。そこで論じられている分析手法は、金融経済理論の概念と方法論に立脚した緻密な理論に裏付けられているのみならず、実務でもきわめて有用な内容となっている。

共著者のリチャード・スミス氏は、米国クレアモント大学院大学ピーター・F・ドラッカー・アンド・マサトシ・イトウ経営大学院教授、ジャネット・Kスミス氏は、同クレアモント・カレッジ教授である。リチャード・スミス教授は、ベンチャー・ファイナンス研究所ディレクターも兼任し、ベンチャー・キャピタリストやビジネス・エンジェル、アントレプレナーなど実務家や政府に対して、投資、企業価値評価、証券訴訟、独占禁止法など幅広い問題について、専門的な助言を行っている。ジャネット・スミス教授は、契約の経済学などを専門とする。また、総監訳者の山本一彦氏は、独立系の*1クラシック型ベンチャー・キャピタリストであると同時にベンチャー企業を経営するアントレプレナーでもあり、実務と理論の融合に力を入れて活動している。これら日米の理論家、実務家が何度も行き来、やり取りしながら翻訳に取り組んだため、読みやすく仕上がっている。
*1クラシック型ベンチャー・キャピタル:資金だけの提供ではなく、投資先企業の経営にも深く関わるタイプのベンチャー・キャピタル

アントレプレナー、ベンチャー・キャピタリスト、投資銀行家、機関投資家、会計・法律専門家、政策立案者、研究者、経営大学院生など、ベンチャー企業のディール・ストラクチャーに携わるプロフェッショナルとその志望者にとって必読の書である。

目次

第1部 始動
第1章 はじめに
第2章 ベンチャー企業の資金調達

第2部 事業戦略、事業計画の財務的側面
第3章 事業計画書
第4章 ベンチャー企業の戦略
第5章 シミュレーションを利用した事業戦略の構築

第3部 財務予測
第6章 財務予測の手法
第7章 資金需要の予測

第4部 企業価値評価
第8章 ベンチャー企業の価値評価―フレームワーク―
第9章 企業価値評価の実践―外部投資家の視点―
第10章 アントレプレナーにとっての企業価値評価

第5部 組織設計とディール・ストラクチャー
第11章 情報対称下でのディール・ストラクチャー
第12章 情報の非対称性とインセンティブの問題
第13章 ディール・ストラクチャー

第6部 資金調達と投資回収の選択
第14章 ベンチャー・キャピタル・ファンド
第15章 資金調達の選択
第16章 投資の回収

第7部 結論
第17章 アントレプレナー・ファイナンスの未来:グローバルな展望

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