人を助けるとはどういうことか

著者名 エドガー・H・シャイン 著 金井壽宏 監訳 金井真弓 訳
タイトル 人を助けるとはどういうことか
出版社 英治出版 2009年8月
価格 1990円 税別

書評

ながらくMITの組織論の看板教授であったエドガー・H.シャイン教授が今年出した新著のうちの一冊です。もう一冊は、『組織療法(オーガニゼーショナル・セラピー)』ですが、ある意味でその姉妹書といえる本書の原著タイトルは、一言、Helpingと名づけられています。訳書では、『人を助けるとはどういうことか―本当の「協力関係」をつくる7つの原則』というタイトルになっています。

ひとの助けになるのは難しいですし、ひとの助けのつもりでおこなったことが、結局は相手に役立っていないことも多々あります。著者は、その最大の問題は、助けようとする側が、助けになろうとしている相手についてよく知らないことにあると主張しています。上司は、助けたいと思う部下について、親は、助けになりたいと思う子供について、何がそのひとの助けになるのかを十分には知らないことが多い。そのことをよく自覚する必要があります。また、助けてしまうことが、相手の自立にプラスにならないこともあります。だから、答を授けることよりも、助けたい相手が自分で答を探し出すプロセスを支援するという方法がありえます。それは、シャイン教授が、40年以上も探求してきたプロセス・コンサルテーションという独自の組織開発法です。専門家として内容面でアドバイスするだけでもなければ、医者と患者の関係のように、こっちが直してあげますと接するのでもない方法。それが、プロセスを促進するという支援のあり方です。

これまでに、シャイン教授は4冊のプロセス・コンサルテーションの書籍を書いていますが、それをさらに深めたのが本書です。ぐいぐいひとを引っ張っていくだけがリーダーシップではないと思っているひと、コーチングの技法に理論的な裏づけがほしいと思っているひと、また、より若いひと、友だち、恋人、配偶者にとってより助けになる人間になりたいと思っているひとには、読んでいただきたい書籍です。わたしにとって大事な恩師の新著であるので、通常の翻訳書より、はるかに長い解説を付けさせてもらいました。

目次

1 人を助けるとはどういうことか
2 経済と演劇 人間関係における究極のルール
3 成功する支援関係とは?
4 支援の種類
5 控えめな問いかけ 支援関係を築き、維持するための鍵
6 「問いかけ」を活用する
7 チームワークの本質とは?
8 支援するリーダーと組織というクライアント
9 支援関係における7つの原則とコツ