生産財マーケティング


著者名 高嶋克義 南知惠子
タイトル 生産財マーケティング
出版社 有斐閣 2006年11月
価格 2400円 税別

書評

生産財マーケティングを学ぶための教科書が、日本でもようやく出版されました。この本は、ビジネススクールや企業研修、大学院、大学の専門課程で生産財マーケティングを学ぶ人たち、あるいは生産財マーケティングの知識を必要としている企業の人たちのための教科書です。

生産財マーケティングとは、産業財マーケティング、B to Bマーケティング、ビジネス・マーケティングとも言いますが、一般消費者ではなく企業・組織が顧客となる場合のマーケティングのことです。こうした生産財事業では、特定の顧客との継続的な関係を前提としたマーケティング活動が展開されますので、消費財のマーケティングとは違った問題意識や考え方が求められます。そのためこの本では、消費財の場合と対比して生産財のマーケティングにどのような特徴があるのか、どのようなマーケティング計画を立てるべきか、さらには、多様な生産財事業の間での違いをどのように考えるべきかについて説明しています。

なお、海外における生産財マーケティングの教科書は、市場の視点を重視するものと関係の視点を重視するものの2つのタイプに分けることができます。前者は、おもにアメリカの伝統的な「インダストリアル・マーケティング」の流れをくむもので、生産財の購買行動を理論体系の核としてセグメンテーションやポジショニングを考え、消費財のマーケティング・マネジメント論やマーケティング戦略論の応用という性格が強く現れます。そして後者は、とくにヨーロッパを中心とする関係性マーケティングの研究から派生した「ビジネス・マーケティング」の教科書であり、生産財の取引関係をどのように構築するかに最大の関心が置かれています。

この本は、生産財マーケティングの標準的な教科書をめざすものですが、こうした市場と関係という2つの視点の両方に依拠した説明を取り入れています。市場の視点では、市場を分析し、マーケティング計画を立て、その計画実行を管理するという問題を考えるマーケティング論が説明されており、その一方で「関係」の視点から、顧客との相互作用に焦点を合わせて、それを効果的に実現するためにどのような関係や組織をつくるべきかを考えるマーケティング論が提起されています。その意味では、標準的であっても、世界的にも新しいスタイルの教科書になっていて、市場と関係の両方の視点から、生産財マーケティング論の全体像を理解できるものと思います。

目次

第1章 生産財マーケティングとは
第2章 購買行動を分析する
第3章 市場を分析する
第4章 取引関係を構築する
第5章 依存関係を管理する
第6章 顧客に適応する
第7章 新製品を開発する
第8章 営業体制をつくる
第9章 潜在顧客を開拓する
第10章 チャネルを構築する
第11章 これからの生産財マーケティング