財務会計のイノベーション ―公正価値・無形資産・会計の国際化による知の創造―
著者名 | 古賀智敏 編著 與三野禎倫 著(第8章担当) |
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タイトル | 財務会計のイノベーション ―公正価値・無形資産・会計の国際化による知の創造― |
出版社 | 中央経済社 2009年4月 |
価格 | 4600円 税別 |
書評
本書は、製造型産業経済から金融経済、また更には知識創造経済への経済基盤の移行を受けて、「公正価値」、「ナレッジ(無形資産)」、および「グローバリゼーション(国際化)」をキーコンセプトとし、次世代の会計理論と制度のあり方を総合的に究明しようとするものである。機械設備等の生産手段を中心とした20世紀マニュファクチュアリング型ビジネスモデルに対して、21世紀型ビジネスモデルでは、情報技術(IT)の発達とともに、デリバティブ等の金融商品や技術・ノウハウ・特許といった無形資産が企業の価値創造のリソースとして重視されるようになり、それが企業評価の尺度となる。これら有形財と金融財および無形財との3者間の共振関係の上に成立する企業体に共通する評価尺度が、「公正価値」であり、その台頭をもたらしたのが経済・会計のグローバリゼーションであった。つまり、公正価値は21世紀型ビジネスモデルに共通する評価尺度であり、国際化時代の会計の理論と制度構築のコア・コンセプトをなすものである。本書は、これら公正価値・無形資産会計とIFRS統一化の時代に対応した財務会計の現代的課題を総合的に究明しようとするものである。
目次
第I部 会計理論の変容と公正価値会計
第1章 産業構造の変化と公正価値会計の展開―プロダクト型経済からナレッジ型経済へ―
第2章 公正価値概念と公正価値会計の構造
第3章 概念フレームワークと公正価値会計―測定と開示
第4章 公正価値会計と新しい監査の展開
第I I部 金融経済の拡充化と金融商品の会計
第5章 金融資産・負債の評価と現在価値測定
第6章 子会社・関連会社株式の評価と減損会計
第7章 時価情報のボラティリティと金融機関の業績評価
第I I I部 イノベーション/ネットワーク経済と無形資産会計
第8章 研究開発投資情報の開示と評価
第9章 知識創造化社会における無形財の認識・測定と開示の方向性
第10章 人的資本マネジメントと人的資本報告書の理論と実践
第11章 ネットワーク経済とブランド資産の会計
第12章 知的資産レポーティングの現状と展望―日米欧の報告書モデルの構造と特徴
第I V部 経済のグローバリゼーションと国際会計
第13章 証券市場のグローバル化と国際財務会計基準の新展開
第14章 原則主義会計と細則主義会計―アメリカ・イギリス・カナダにおける動向
第15章 証券市場の発展と中国における会計基準のグローバル化
第16章 内部統制の史的展開と国際比較
第17章 新興国市場と非財務情報の投資意思決定有用性