リーダーシップの旅-見えないものを見る
著者名 | 野田智義 金井壽宏 |
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タイトル | リーダーシップの旅-見えないものを見る |
出版社 | 光文社新書 2007年2月 |
価格 | 780円 税別 |
書評
リーダーシップの研究や研修をながらくしていると、それが大事なものだと前提としてしまっているようなところがあります。組織がうまく定常的に運営されるということだけが目的なら、マネジメントだけですみます。今ある仕組みを破壊してでも、環境の変化に応じた、あるいは変化を先取りするような動きを組織にもたらすには、リーダーシップがいります。少なくとも、わたしはずっとそう思ってきました。
しかし他方で、できることなら、リーダーシップなどにはかかわりたくない、それは自分とは無縁だと思っているひとが多いのも事実です。わが国における革新的で異色なリーダーシップ塾として注目されているインスティテュート・オブ・ストラテジック・リーダーシップ(ISL)の創始者、野田智義さんが、元々はリーダーシップは、知的にも実践的にも、とてもとっつきにくいテーマだと思っておられたのは興味深いことでした。
そういう野田さんが独自のあゆみをこの分野で始めて以降、議論する機会はありましたが、今回、ふたりの考えをすり合わせながら、一冊の書籍を仕上げることができて喜んでいます。ひとりで書いた本でなく相棒がいるので、書きながら自分が学ぶことの多い執筆過程でした。わたしのほうが、聞き役・引き出し役みたいなところがかなり多いですが、それは、野田さん自身がリーダーシップを実践しているので、なにより実践家としての持論を重視したい、それに敬意を払いたいと思ったからです。実践家の持論とその背後にある経験に注目すべきだという立場は、わたし自身が前著『リーダーシップ入門』(日経文庫)で主張してきたことです。
キャリアについて、そのエッセンスは旅だと比喩されることがありますが(たとえば、安藤忠雄さん)、本書では、リーダーシップをプロセスとして捉え、旅のメタファーを随所で使いました。まず、目次を見てください。思えば、ISLでリーダーシップを発揮するに至る野田さんの半生も旅そのものです。章ごとに、冒頭に投げかけ、末尾にまとめをつけていますので、読んだあとも振り返りやすいようになっています。
読者の皆さんが、ありきたりのリーダーシップ論にはもう興奮しない、あるいは、かつての野田さんのように、よく聞くリーダーシップ論の能書きでは心に響かないと思われているなら、ぜひ、野田さんの考えにふれてみてください(ついでに、わたしの考えにも)。わたしもできる限り、これまでのリーダーシップ研究で意味があると思われるところはふれるようにしたので、通常とは語り口が違うが、新しいタイプのリーダーシップの入門書になっていれば、と希望しています。
目次
序章 「リーダーシップ」はなぜ心に響かないのか
第一章 リーダーシップの旅
第二章 なぜリーダーシップが必要なのか
第三章 旅の一歩を阻むもの
第四章 旅で磨かれる力
第五章 返礼の旅