幸之助論―「経営の神様」松下幸之助の物語


著者名 ジョン・P・コッター 著 金井壽宏 監訳 高橋啓 訳
タイトル 幸之助論―「経営の神様」松下幸之助の物語
出版社 ダイヤモンド社 2008年4月
価格 1800円 税別

書評

著者のジョン・P・コッター教授は、ハーバード・ビジネス・スクールの組織行動論の教授であり、そして、本書の素材は、松下幸之助氏の生涯とリーダーシップです。コッターは、ハーバードで松下幸之助氏ゆかりの講座の教授となった(マツシタ・チェアーの教授といわれる)のをきっかけに、生活史で読み解くリーダーシップ開発のストーリを書く決心をしました。リーダーシップ論には、当然、リーダーシップ理論というものがいりますが、実際には、リーダーシップは理論として学ぶだけではなく、それを実践できないと話になりません。それを身につける真の学校は、文字通りの学校ではなく、仕事上の経験であり、また、スケールの大きなリーダーシップを発揮する道のりは、長い期間仕事を続けてこられたひとにとっては、そのキャリア全体、さらにいえば人生全体に関わってきます。近年、例えば、リーダーシップ論の大御所のウォレン・ベニスが、逆境(crucible)に注目し、CCL(Center for Creative Leadership)が修羅場(hardships)に焦点をあわせ、一言でいえば、「艱難汝を珠にする」という諺どおり、とてつもない苦境を経て身につく、発想、思いやり、勇気、そして怖れが、そのひとのリーダーシップ発揮の力を磨くという点を改めて重視するようになってきました。生涯発達の心理学でも、世代継承性とリーダーシップを結びつけて考えようとする中で、ノースウェスタン大学のダン・マッカダムズは、苦境をポジティブに転じる「あがない」(redemption)が、社会の大きなものを遺すひとには、みられると主張しています。

『幸之助論』は、単に組織行動論のリーダーシップ論であるばかりでなく、松下幸之助氏というひとりの人物の一生をかけての「リーダーシップ生涯発達」「アイデンティティ生涯発達」の文献としても読めるような作品です。いったん絶版になっていた本書が、新訳で再び姿を現す際に、これを監修するばかりでなく、長い解説風のまえがきも書かせていただきました。今度こそ、より広く読まれることを希望したいです。

目次

序章 経営の神様
第1章 偉業の源泉
第2章 企業家の誕生
第3章 独創的カリスマ
第4章 総合的リーダーシップ
第5章 理想のリーダーシップへ