マーケティング


著者名 池尾恭一 青木幸弘 南知惠子 井上哲浩
タイトル マーケティング
出版社 有斐閣 2010年5月
価格 3885円 税込

書評

マーケティング研究分野では、講義用や自習用のテキストが、目的や難易度に応じて数多く出版されている。これは10数年前から顕著に見られる傾向で、それ以前は主として専門書がテキストとして講義に用いられていた。講義計画(シラバス)にしたがってテキストを用いて講義をするという教育スタイルの定着にともない、様々に細分化されたテキストの相次ぐ出版という状況が生まれている。

一方で、マーケティング発祥の地、米国では、フィリップ・コトラーのテキストに代表されるように、ハードカバーの分厚いテキストが改訂を重ねて決定版となっていくという傾向が見られる。我が国では、マーケティング分野の全領域をカバーした、大部なテキストというものは企画されてこなかったが、ここ数年、学生、実務家両方をターゲットとした比較的ボリュームのあるテキストも出版されるようになってきている。

本書は、厚みのあるテキストへの需要を背景として、マーケティング研究分野をすべて網羅的に取り上げるという編集方針をとっている。大部であるが、持ち歩き、自習できるよう製本されている。

従来のマーケティングのテキストでは、意外にも、マーケティング活動の対象である、消費者の行動についての分析には紙幅を割かない傾向にある。しかしながら、本書の一番の特徴として、マーケティング戦略の出発点として、インターネット社会の出現に代表されるように、消費者をとりまく劇的な環境変化の中で、消費者行動分析に重点を置くという構成をとっていることが強調される。消費者市場を含めた環境変化に対応する形でマーケティング戦略のありかたについて解説し、最終パートで近年のマーケティング戦略のフレームに影響を与えているサービス・マーケティングや関係性志向のマーケティング領域へと展開する構成となっている。これ一冊でマーケティングの基礎から最先端のマーケティングの理論およびリサーチのすべてを理解することを狙いとして執筆されている。講義時での学習のみならず、自習用の、本書のいわば辞書的な活用も可能である。

目次

第I部 マーケティングとは
 第1章 現代マーケティングと市場志向
 第2章 企業戦略とマーケティング戦略
第II部 消費者行動の分析
 第3章 消費者行動分析の基本フレーム
 第4章 消費者行動分析の歴史
 第5章 消費行動と消費パターンの分析
 第6章 消費行動と意思決定プロセスの分析
 第7章 知識構造と関与水準の分析
 第8章 消費者データの収集と分析
 第9章 消費者行動把握における定性的調査法
第III部 競争環境と流通環境
 第10章 競争環境の分析
 第11章 流通環境の進展
第IV部 マーケティング戦略の策定
 第12章 市場細分化と標的設定
 第13章 新製品開発
 第14章 製品ライフサイクル
第V部 マーケティング意思決定
 第15章 製品政策
 第16章 ブランド政策
 第17章 価格政策
 第18章 プロモーション政策
 第19章 マーケティング・チャネル政策
第VI部 マーケティング戦略の諸側面
 第20章 サプライチェーン・マネジメント
 第21章 関係性マーケティング
 第22章 ビジネス・マーケティング
 第23章 サービス・マーケティング
 第24章 インターネット・マーケティング
 第25章 マーケティングにおける社会性と倫理性