品質コストの管理会計
著者名 | 梶原武久 |
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タイトル | 品質コストの管理会計 |
出版社 | 中央経済社 2008年3月 |
価格 | 3570 税別 |
書評
本書は、「品質コスト」(quality costs; costs of quality)と呼ばれる経営指標をめぐる日本企業の企業行動について、理論的かつ実証的に検討を行ったものである。近年、日本企業の間に、品質コストの普及が進みつつある。管理会計の観点からみると、日本企業への品質コストの普及は、通説に反する不可思議な現象であると言える。なぜなら、「TQC/TQMなどに象徴される日本的品質管理のもとでは、不良率やサイクルタイムなどの非財務的業績指標が有用であり、財務的業績指標の役割は限定的である」というのが、これまでの通説であったからである。本書では、日本企業になぜ品質コストの利用が広まりつつあるのか、またそれが結果として、品質管理に何をもたらすのかについて検討を行っている。
また、本書では、品質コストの観点から、日本的品質管理の現状や課題について検討を行った。従来、日本的品質管理のもとでは、教育研修や設備の保全など予防活動を重視することによって、長期的には、品質管理のためのコスト(品質管理コスト)と品質不良により企業が被る損失やコスト(失敗コスト)の双方が低減するものとされてきた。しかし、本書の分析結果によれば、長期的に品質管理コストと失敗コストの双方の低減に成功している企業はそれほど多いとは言えず、両者がトレードオフ関係か、もしくはともに増加する関係にある企業が多く存在する。本書では、これらの点について、ものづくり環境の変化と関連づけながら検討を行い、日本的品質管理が直面しているもう一つの課題を抽出し、その解決策について議論を行っている。管理会計領域に加えて、品質管理領域の研究者や実務家にも手に取っていただきたい一冊である。
目次
第1章 本書の問題意識と研究課題
第2章 先行研究のレビュー
第3章 日本企業による品質コスト測定・利用の実態
第4章 品質コスト測定・利用の決定要因に関する分析
第5章 品質コスト測定の効果に関する分析
第6章 品質指標の情報内容に関する分析
第7章 品質コスト・ビヘイビアに関する分析
第8章 「品質コスト」にみる日本的品質管理の現状と問題
第9章 結論とインプリケーション