リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する
著者名 | 中原淳 金井壽宏 |
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タイトル | リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する |
出版社 | 光文社 2009年10月 |
価格 | 900円 税別 |
書評
共著者の中原氏は、今最も注目されている若手の教育学者で、大人になってからの人の学びと成長をテーマとして、企業内教育、そして企業外教育にも興味を持っています。また、われわれのようにMBAをもつスクールの教員はみな、経験豊かな大人の学び方、経験の豊かさを反映した大人への教え方について、ある程度の見識をもっています。企業等の組織の人事部の教育担当者もそうでしょう。
しかし、実はこの分野に、非常に豊かな研究蓄積と文献があることを見逃しがちです。経営学のなかでは、組織行動論のキャリア研究がかろうじて、生涯発達の心理学とライフコース(人生行路)の社会学とつながりをもっています。成人教育、生涯教育、成人学習について、理解を深めることが、経験豊かなマネジャーと接するひとには求められるようになっていくでしょう。
教育学のなかでは企業での教育がこれまであまり扱われず、逆に、経営学ではMBAや企業内教育、リーダーシップ育成、キャリア発達などのなかで、ひとの成長・発達、大人への教育や大人にふさわしい学習法が、あまり正面切って扱われませんでした(経験あるビジネスパースンにケースで教育する意味や方法について、ハーバード関連の文献が散見される程度です)。その意味で本書は、企業で起こっていることにも興味をもつ教育学者と、リーダーシップ育成でさえ、ひとの成長・発達の問題として捉えようとしてきた経営学者との対話から成り立つ書籍です。新人、若手、ミドル、トップのどこに目線を合わせるかという問題があるのですが、ミドル自身がいつもとまどっているという印象を持っているので、ミドルのマネジャーを念頭に置きつつ、いまのマネジャーには違和感があるという若手の気持ちもカバーしたいと思って、本書の焦点をマネジャーレベルに合わせました。キーワードは、内省(リフレクション)と対話(ダイアローグ)とぶれない行為(アクション)です。
アダルト・ラーニングの豊かな文献を渉猟して、経営学の立場からもその分野に貢献していくことは、わたしにとって今後も継続してめざしたいことです。
目次
第1章 「上司拒否。」と言う前に
第2章 内省するマネジャー-持論を持つ・持論を棄てる
第3章 働く大人の学び-導管から対話へ
第4章 企業は「学び」をどう支えるのか
第5章 企業「外」人材育成