リレーションシップ・マーケティング-企業間における関係管理と資源移転-
著者名 | 南知惠子 |
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タイトル | リレーションシップ・マーケティング-企業間における関係管理と資源移転- |
出版社 | 千倉書房 2005年3月 |
価格 | 2100円 税別 |
書評
本書は、企業間のサービス財取引における関係的取引の戦略的側面をテーマとする研究書である。日本の産業構造において、企業間取引に関係的取引が存在することとその問題の重要性についてはこれまで数多く研究対象とされてきた。本書は関係的取引をサービス経済化が進行する現代の主要課題として捉え直し、 IT 業界のサービス取引に焦点をあて、顧客関係強化から生じる需要創出のチャンスとリスク管理の重要性、さらに顧客からの資源移転についてクローズアップする。
重点顧客との関係強化と関係コントロールや、顧客満足と収益性は常にトレードオフ関係になる危険性を持つが、これらの問題について解決するビジネスモデルを実践し、かつ顧客の持つ資源を関係性をベースとして移転させることにより競争優位性を追求する企業のマーケティング戦略を、日本 IBM や NRI 等の事例分析を通じて明らかにしている。本書で指摘する顧客関係の強化による需要創造と顧客関係コントロールは、 IT 業界だけではなく、企業間取引全般における主要な問題である。本書は関係的取引をテーマとする研究書であるが、関係性を志向するマーケティングに関心のある研究者だけでなく、法人顧客をターゲットするビジネスマンにも読んでいただきたい書である。
目次
序章 リレーションシップ・マーケティングにおける問題の所在
第1章 リレーションシップ・マーケティングの理論的系譜と CRM への発展
第2章 取引コストと資源依存パースペクティブ
第3章 重点顧客管理と組織型営業戦略
第4章 営業戦略における情報通信技術の影響と営業ナレッジ
第5章 サービスとリレーションシップ概念
第6章 システム・インテグレーション業界特性とリレーションシップ戦略
第7章 顧客関係性におけるリスク・マネジメントと資源管理 -日本 IBM のケース-
第8章 顧客との関係性による継続的新規事業創出の戦略 -野村総合研究所のケース-
終章 リレーションシップ・マーケティングにおける資源展開と関係マネジメント