リスクファイナンス入門


著者名 甲斐良隆 加藤進弘
タイトル リスクファイナンス入門
出版社 社団法人金融財政事情研究会 2004年3月
価格 3200円 税別

書評

「リスクファイナンス」という言葉は未だ馴染みが薄く、その定義も未だ確立していない。本書では「リスクの財務的処置」と定義し、リスクの外部移転と自己保有をその内容としている。一般的には保険機能が想定されるが、保険だけでなくオプションをはじめリスクをヘッジする手段や自家保険を包含した概念をさす。

ニーズとシーズの両面からリスクファイナンスが注目されるようになった理由を紹介する。まず、企業サイドのニーズである。企業経営がグローバル化し、企業を取り巻くリスクが従来と様変わりに変化している。不確実性の増大、対応を誤った場合の膨大なコストが企業を脅かす時代が来た。リスクへの対応に相応のコストをつぎ込むことは不可避であり、そのマネジメントの差が企業格差を生み出す。

一方、シーズとは、金融・保険分野の融合が進み、リスク・ヘッジのための新商品が大量に世の中に出回るようになったことである。これには、一連の規制緩和の影響もさることながら、デリバティブや証券化をはじめとした金融工学の進歩が低コストでニーズにマッチする商品の開発を可能にしたことが大きい。

事業戦略とは、収益を生み出すために不確実性を克服する方法論であり、利潤はリスクに対する報酬である。リスクマネジメントの目的は、リスクの最小化自体ではなく、ビジネス戦略と整合性をもってリスクと機会と資本とをバランスさせる最適状態をもたらす仕組み作りである。

本書ではリスクファイナンスを体系的に捉えるべく、企業価値のリスク評価からリスク管理文化までを広範囲にカバーしている。金融市場と保険市場の垣根を意識し、それらを横断的に貫くことを念頭に置きながら書き進めた。また、リスクの移転や管理をする際にそれらの市場をどのように利用できるのかを示しながら、両方の市場を比較して税制面・法制面などを含めた長所と短所に触れている。

目次

第1章 企業価値とリスクファイナンス
第2章 リスクの評価
第3章 保険機能の設計
第4章 最適なリスクファイナンスの決定
第5章 リスクファイナンス市場の現状
第6章 金融と保険の融合
第7章 新しいリスクへの対応
第8章 リスクファイナンスの発展に向けて