戦略暴走:ケース179編から学ぶ経営戦略の落とし穴


著者名 三品和広
タイトル 戦略暴走:ケース179編から学ぶ経営戦略の落とし穴
出版社 東洋経済新報社 2010年5月
価格 3990円 税別

書評

企業組織はピラミッドに喩えられることが多い。私としては、ピラミッドよりも、高い山の方が比喩としては適切と考えている。その理由は、「空気」にある。

企業に入社してから部長職あたりまでは、自らの経験をベースにして的確な判断を下すことができる。ここまでは、見晴らしは利かないが、木々に覆われて森林浴を楽しむことができる山の中腹までのようなものである。ところが役員まで登り詰めると、社外も含めて見晴らしが利くようになる反面、自分が経験を積んでいない分野について責任を負わされるようになる。これは、空気が薄い山の9合目や山頂で、高速腕立て伏せを強要されるようなものである。

この本は、かつては優秀な実務家として鳴らした人々が、次々と高山病に打ちのめされていく様を描いたケース集である。目的はただ一つ、自信に溢れる実務家たちに空気の薄い世界の恐ろしさを知ってもらい、対策を促す点にある。経営職の真価は空気の薄い世界で問われることを、この本と向き合いながら、しっかりと噛みしめていただきたい。それが、この本に託した私の願いである。

目次

第1部 国際化

第1章 資本参加
 1 ゆるやかな支援から完全買収に至ったケース群
  ケース001 日本電気(パッカード・ベル)
  ケース002 富士通(アムダール)
  ケース003 豊田工機(H・エルノー・ソムア)

 2 日本における協力関係から完全買収に至ったケース群
  ケース004 日本鉱業(グールド)
  ケース005 ロート製薬(メンソレータム)

 3 小口資本参加から買収に至ったケース群
  ケース006 古河鉱業(ポートケンブラ銅精錬所)
  ケース007 藤沢薬品工業(ライフォメッド)
  ケース008 小西六写真工業(フォトマット)

 4 完全買収の手前で踏みとどまったケース群
  ケース009 デサント(アンリ・シャルル・コルソネ)
  ケース010 大同特殊鋼(カッパーウェルド・スチール)

 5 非支配的株主に踏みとどまったケース群
  ケース011 伊勢丹(バーニーズ)
  ケース012 帝人(アルペック)
  ケース013 アサヒビール(エルダーズ)
  ケース014 日本板硝子(リビー・オーエンス・フォード)

 6 純粋な合弁に終始したケース群
  ケース015 日本合成ゴム(イラン・ジャパン石油化学)
  ケース016 日本コンクリート工業(タイ・日本・コンクリート)
  ケース017 旭可鍛鉄(モーター・ホイール)

第2章 M&A
 1 売上規模を買いに行ったケース群
  ケース018 大日本インキ化学工業(ライヒホールド・ケミカルズ)
  ケース019 三和シヤッター工業(オーバーヘッド・ドア)
  ケース020 丸山製作所(ホルダー)

 2 時間、または顧客ベースを買いに行ったケース群
  ケース021 レナウン(アクアスキュータム)
  ケース022 リョービ(シンガー:モーター製品部門)
  ケース023 日本精工(ユナイテッド・プレシジョン・インダストリーズ)
  ケース024 石原産業(SDSエンタプライズ)

 3 販路を買いに行ったケース群
  ケース025 ニチレイ(ベレルソン)
  ケース026 徳山曹達(ゼネラル・セラミックス)
  ケース027 安川電機(ハントエア:局所クリーンルーム事業部門)

 4 生産拠点を買いに行ったケース群
  ケース028 電気化学工業(ペトロテックス・ケミカル・テキサス工場)
  ケース029 住友特殊金属(ナショナル・マグネティクス)
  ケース030 太平洋工業(タレーラス・ノタリオ)
  ケース031 高砂香料工業(モンサント:シカゴ工場)

 5 技術を買いに行ったケース群
  ケース032 ロイヤル(ペンタグラム)
  ケース033 北陸電気工業(レキシカン・サーキット)

 6 何を買いに行ったのか不明なケース群
  ケース034 三菱地所(ロックフェラー・センター)
  ケース035 小松製作所(ユニオン・カーバイド:多結晶シリコン部門)
  ケース036 日立工機(データプロダクツ)

第3章 自力進出

 1 貿易摩擦への配慮から海外に工場進出したケース群
  ケース037 富士通(グレシャム工場、ダーラム工場)
  ケース038 豊田工機(TMU)
  ケース039 北川鉄工所(キタガワUSA)
  ケース040 光洋精工(オーストラリアン光洋)
  ケース041 東海染工(テックスプリント)

 2 円高への対応として海外に工場進出したケース群
  ケース042 第一電工(オプテック・ダイイチデンコー)
  ケース043 東京製綱(ATR)
  ケース044 オークマ(オークマアメリカ)
  ケース045 住友特殊金属(P.T.スミマグネウタマ)

 3 川下に随伴する形で海外に工場進出したケース群
  ケース046 三菱マテリアル(米国三菱シリコン)
  ケース047 石原産業(ISKマグネティックス)
  ケース048 市光工業(IMI)
  ケース049 セーレン(セーレン・ド・ブラジル)

 4 あこがれのアメリカに事業進出したケース群
  ケース050 立石電機(オムロンR&D)
  ケース051 フジテック(フジテック・アメリカ)

 5 新規事業に挑むために海外進出したケース群
  ケース052 クラリオン(セレクトテレビ)
  ケース053 シルバー精工(シルバー・セイコー・アメリカ)

 6 日本から脱出すべく海外進出したケース群
  ケース054 三菱電機(フランス工場)
  ケース055 協和醗酵工業(メキシコ工場、アメリカ工場)
  ケース056 フジタ工業(中東駐在員事務所)
  ケース057 千代田化工建設(ナイジェリア ポートハコート)
  ケース058 住友電設(スミトモデンセツアジア)

第2部 多角化

第4章 ランプレー

 1 鉄や電気分解からアルミに進出したケース群
  ケース059 住友軽金属工業(酒田工場)
  ケース060 住友化学工業(住友東予アルミニウム製錬)
  ケース061 三機工業(滋賀工場)
  ケース062 昭和アルミニウム(昭和コーニア)

 2 旅客運送業者がホテル経営に進出したケース群
  ケース063 全日本空輸(ANAグランドホテルウィーン)
  ケース064 近畿日本ツーリスト(ハファダイ・ビーチ・ホテル)

 3 酒類のなかで事業立地のシフトを試みたケース群
  ケース065 寳酒造(タカラビール)
  ケース066 三楽(ピーチツリーフィズ)

 4 糸類のなかで事業立地のシフトを試みたケース群
  ケース067 片倉工業(日本ビニロン)
  ケース068 日東紡績(郡山第2工場)
  ケース069 塚本商事(タリア・イタリア)

 5 食品メーカーが外食事業に進出したケース群
  ケース070 森永製菓(森永ラブ)
  ケース071 日清食品(トムソーヤ)
  ケース072 林兼産業(伊喜伊喜・長崎茶寮)

 6 垂直連鎖のなかで川下ステージに進出したケース群
  ケース073 大建木材工業(ダイケンホーム)
  ケース074 日曹製鋼(新潟工場)
  ケース075 日本冶金工業(ナスステンレス)
  ケース076 中央板紙(日本パック)
  ケース077 三菱樹脂(ペットボトル)

第5章 パスプレー

 1 経営者の判断で新規成長事業に取り組んだケース群
  ケース078 星電器製造(神戸工場)
  ケース079 井関農機(専商)
  ケース080 ほくさん(ほくさん電子)
  ケース081 阪田商会(ハモンド・インターナショナルジャパン)
  ケース082 岩谷産業(岩谷住宅建設)
  ケース083 スバル興業(スバルボウル)

 2 異業種から化粧品に参入したケース群
  ケース084 タクマ(ロワール化粧品)
  ケース085 ツムラ(ツムラ化粧品)

 3 異業種からホテルに参入したケース群
  ケース086 四国化成工業(アイランダーホテル本島)
  ケース087 ニチレイ(京都ホテル)

 4 戦略不全企業が新天地を求めたケース群
  ケース088 エコナック(エコなきのこ)
  ケース089 神戸生絲(神戸電子)
  ケース090 神戸生絲(型枠材事業)
  ケース091 段谷産業(段谷精密工業)
  ケース092 関東特殊製鋼(カントクハイテック)
  ケース093 志村化工(御殿場工場)

 5 経営危機に陥った異業種企業の救援に向かったケース群
  ケース094 伊藤忠燃料(東海)
  ケース095 理研光学工業(リコー時計)

 6 似て非なる隣接事業に進出したケース群
  ケース096 日成ビルド工業(日成リース)
  ケース097 日成ビルド工業(日本起重機製作所)
  ケース098 日産化学工業(日産石油化学)
  ケース099 ゼネラル石油(ゼネラルエネルギー開発)

第6章 バンドワゴン

 1 PC用の半導体に飛びついたケース群
  ケース100 ミネベア(NMBセミコンダクター)
  ケース101 新日本製鐵(日鉄セミコンダクター)
  ケース102 神戸製鋼所(KTIセミコンダクター)
  ケース103 住友金属工業(住友金属エレクトロデバイス)

 2 PC用の磁気ディスクに飛びついたケース群
  ケース104 花王(花王ダイダック)
  ケース105 住友軽金属工業(住軽メモリーディスク)
  ケース106 日本軽金属(苫小牧工場)
  ケース107 三菱金属(三菱アルミニウム)
  ケース108 電気化学工業(渋川工場)
  ケース109 興亜電工(ミラ)

 3 HDD用の磁気ヘッドに飛びついたケース群
  ケース110 日立金属(磁性材料研究所)
  ケース111 ミツミ電機(鶴岡工場)
  ケース112 松下寿電子工業(クアンタム)

 4 通信用の光ファイバーに飛びついたケース群
  ケース113 住友電気工業(SERT)
  ケース114 住友電気工業(清原住電)
  ケース115 古河電気工業(ルーセント光ファイバー部門)
  ケース116 日立電線(日高工場)
  ケース117 東陶機器(福島工場)

 5 PCディスプレイ用CRTに飛びついたケース群
  ケース118 日本電気硝子(テクネグラス)
  ケース119 旭硝子(船橋工場、高砂工場)

第3部 不動産

第7章 リゾート

 1 ハワイ諸島の開発に参加したケース群
  ケース120 東京急行電鉄(マウナ・ラニ・リゾート)
  ケース121 飛島建設(カアナパリ・ノースビーチ)

 2 国内でリゾートホテルを建設したケース群
  ケース122 大和ハウス工業(ロイヤルホテルリゾート)
  ケース123 小堀住建(軽井沢倶楽部)

 3 国内で大型テーマパークの開発に挑んだケース群
  ケース124 近畿日本鉄道(志摩スペイン村)
  ケース125 森永製菓(エンゼルの森)

 4 国内でスキー場を建設したケース群
  ケース126 ヤマハ(キロロリゾート)
  ケース127 川鉄商事(小海リゾートシティ・リエックス)
  ケース128 東急不動産(タングラム斑尾リゾート)
  ケース129 北沢バルブ(キッツメドウズ)

 5 国内で小規模リゾート施設を建設したケース群
  ケース130 中部日本放送(高山ランド)
  ケース131 五洋建設(日本ビラ)

 6 国内外で手当たり次第の開発に挑んだケース群
  ケース132 佐藤工業(佐工不動産)
  ケース133 レストラン西武(西洋環境開発)
  ケース134 パスコ(パシフィックリゾート)
  ケース135 日商岩井(チャレンジ88)

第8章 ゴルフ場

 1 ポスト第1次ブーム期にオープンしたケース
  ケース136 西武鉄道(久邇カントリークラブ)

 2 ポスト第2次ブーム期にオープンしたケース群
  ケース137 山善(ぜんカントリークラブ)
  ケース138 四日市倉庫(三鈴カントリー倶楽部)
  ケース139 三井建設(那須サンランドゴルフクラブ)
  ケース140 よみうりランド(千葉よみうりカントリークラブ)
  ケース141 日本マタイ(マタイ山口カントリークラブ)
  ケース142 澁澤倉庫(埼玉ゴルフクラブ)

 3 第3次ブームの間にオープンしたケース群
  ケース143 大日本土木(大栄カントリー倶楽部)
  ケース144 大洋漁業(久慈大洋ゴルフクラブ)
  ケース145 神奈川中央交通(中伊豆グリーンクラブ)

 4 ポスト第3次ブーム期にオープンしたケース群
  ケース146 日本鋪道(パサージュ琴海アイランドゴルフクラブ)
  ケース147 森永製菓(森永高滝カントリー倶楽部)
  ケース148 ダイワ精工(ダイワヴィンテージゴルフ倶楽部)
  ケース149 大日本インキ化学工業(天ヶ代ゴルフ倶楽部)
  ケース150 世紀東急工業(ロイヤルフォレストゴルフ倶楽部)
  ケース151 美津濃(マーブ月山ゴルフ倶楽部)
  ケース152 福田組(阿賀高原ゴルフ倶楽部)
  ケース153 ナカノコーポレーション(グリーンウッドCC)
  ケース154 河合楽器製作所(三木の里カントリークラブ)
  ケース155 五洋建設(野母崎ゴルフクラブ)

 5 オープンに至らなかったケース群
  ケース156 佐田建設(栃木県・千葉県)
  ケース157 大末建設(兵庫県淡路島)
  ケース158 松坂屋(三重県菰野町)
  ケース159 三越(千葉県八街市)

第9章 開発事業

 1 社有地の有効活用を試みたケース群
  ケース160 日本鋼管(ハートアイランド新田)
  ケース161 品川燃料(シナネンカナルサイドビル)
  ケース162 市田(サンマリオン大阪)
  ケース163 三菱マテリアル(大阪アメニティパーク)

 2 分譲マンションの開発に乗り出したケース群
  ケース164 蝶理(蝶理興産)
  ケース165 グンゼ産業(グン産興発)

 3 宅地分譲に乗り出したケース群
  ケース166 殖産住宅相互(ホーメストタウン八王子)
  ケース167 林兼産業(林兼商会)
  ケース168 日比谷総合設備(北神沿線)
  ケース169 新井組(アイ・エフ)

 4 商業用地開発に乗り出したケース群
  ケース170 合同製鐵(合鐵商事)
  ケース171 トーメン(ACT-90)
  ケース172 東洋建設(上陸作戦)

 5 海外不動産開発に乗り出したケース群
  ケース173 清水建設(シミズ・アメリカ)
  ケース174 鹿島建設(KDC)
  ケース175 熊谷組(ロンドン営業所)
  ケース176 大林組(550ホープストリート)
  ケース177 佐藤工業(スパニッシュヒルズ)

 6 不動産担保融資に取り組んだケース群
  ケース178 川崎製鉄(川鉄リース)
  ケース179 ミサワホーム(ミサワバン)

終 章 暴走ケース群から学ぶ教訓
 1 経営者が留意すべき落とし穴
 2 研究者が留意すべき落とし穴

 3 政策立案者が留意すべき落とし穴

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