仮想経験のデザイン-インターネット・マーケティングの新地平


著者名 石井淳藏 水越康介
タイトル 仮想経験のデザイン-インターネット・マーケティングの新地平
出版社 有斐閣 2006年7月
価格 2500円 税別

書評

近年「顧客起点」という言葉がしばしば使われるが、単に顧客のプロフィール情報や購買履歴が入手可能になったという事実だけにより、この言葉を標榜しているような状況が散見される。顧客データが入手可能になった現在、それを具体的にいかにマーケティング戦略に取り込んでいくかという点で、競争段階に入ったといえる。

本書は、CRM(customer relationship management:顧客関係管理)をテーマとし、理論的、実証的に捉えようとするものであるが、上記の点を問題意識として根底に持ちつつ、研究書として次の二つの特徴を持つ。

一つは、マーケティング理論は元来、「顧客志向」を理念として掲げつつも、「顧客」は理論的にどのように位置づけられてきたのかに注目し、「情報技術」がマーケティング理論において顧客へのアプローチをいかに変えつつあるかという問題に対してアプローチしていることである。

二つ目は、過去四半世紀にわたり、サプライヤーと組立てメーカー、メーカーとチャネルといった企業間、組織間のリレーションシップ(関係性)に焦点を当てた研究が行われてきたが、近年の企業と消費者とのリレーションシップ構築への議論展開について、無条件に理論を拡張するのでなく、関係構築の問題にアプローチしたということである。

リレーションシップについての研究者、顧客との関係構築をめざす実務家の両方に読んでいただければ、筆者として幸いである。

目次

序章  成熟市場における顧客関係戦略:問題の所在と本書の構成
第1章 戦略的顧客志向のマーケティング
第2章 情報技術の発展とマーケティング
第3章 CRM概念とテクノロジー
第4章 CRMの成果
第5章 ロイヤルティ・マーケティング
第6章 顧客関係管理システムの導入状況
第7章 業界による顧客リレーションシップ戦略の相違
第8章 顧客リレーションシップ戦略の実証分析
第9章 小売業におけるCRM戦略:英国食品小売業テスコのケース
終章 顧客リレーションシップ戦略に向けて

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