日本の工業化と女性労働


著者名 ジャネット・ハンター 著 阿部武司 谷本雅之 監訳 榎一江 訳(第5章担当)
タイトル 日本の工業化と女性労働
出版社 有斐閣 2008年6月
価格 4900円 税別

書評

本書 Women and the Labour Market in Japan’s Industrialising Economy: The Textile Industry before the Pacific War (RoutledgeCurzon, 2003) の著者ジャネット・ハンター(Janet Hunter)教授は、ロンドン大学LSE(The London School of Economics and Political Science)の経済史部門に所属し、イギリスにおける日本近代史研究をリードする存在である。その繊維労働市場に関する研究が、日本経済史・経営史の研究者によって翻訳された。

近代日本の繊維労働市場に関しては、経済史・経営史を中心に多くの研究蓄積がある。それらに対して本書が異彩を放っているのは、その包括性と分析視角である。近年、日本の研究が繊維産業の部門ごとに細分化されているのに対し、本書は製糸業、紡績業、織物業の三部門を一括して検討し、その共通性に光を当てる。また、ジェンダーの視角に乏しい従来の社会経済史研究に対し、意識的にジェンダーの議論を展開する。ジェンダーによって高度に分断された労働市場の形成に関する本書の分析が、日本人の読者にとっても有意義であることに疑いはない。

目次

第1章 イントロダクション―繊維労働者と日本の工業化
第2章 農村との結びつき―成長、分配、ジェンダー―
第3章 戦前期日本における機械制繊維産業の成長
第4章 農村出身者
第5章 繊維労働者の生成
第6章 賃金制度
第7章 ゲームのルールの変更―政府の役割
第8章 共謀と協同―雇用主と従業者の集団的行動
第9章 繊維労働、家族、村
第10章 まとめ

前の記事

近代製糸業の雇用と経営

次の記事

Industrial Innovation in Japan