No. 2026-03ディスカッション・ペーパー

中小企業M&AにおけるM&A戦略とPMI:統合型・支援型・非介入型の類型化

要約


本稿は、売手が中小企業(とりわけファミリー企業)であるM&Aを対象に、ディール後の統合プロセス(PMI)がいかに設計され、何によって規定されるのかを、買手企業へのインタビューに基づく定性的複数事例研究として検討する。既存のPMI研究が大企業・買手を中心に蓄積されてきた限界を踏まえ、売手中小企業に固有の組織特性——オーナーへの集権性、管理システムの非形式性、特定個人への依存——が、統合の深度・対象次元・期間の選択を規定するという問題意識を提示する。
理論的には、統合アプローチ論(Haspeslagh&Jemison, 1991)および人的統合と業務統合の相互依存(Dao&Bauer, 2021)を基礎としつつ、各類型における制度化・形式化の現れ方を記述する補助概念として「プロフェッショナル化」(Dekker et al., 2013, 2015)を導入する。方法としては、複数事例の比較による帰納的類型化(Eisenhardt, 1989; Gioia et al., 2013; Yin, 2014)を採用し、6社(A〜F社)のケース内分析とケース間比較を通じて統合様式のパターンを抽出した。
分析の結果、買手が当該ディールをいかなる戦略目的に位置づけるかに応じて、PMIは「統合型」「支援型」「非介入型」の三類型に整理できることを示した。統合型は標準化と統制による短期的改善を志向し、財務管理や人事を含む多次元の制度化を短期間で実装するとともに、売手オーナーの早期退出を重視する。支援型は文化・価値観の調和を前提に、自律性を保ちながら必要な次元から漸進的に制度化を進め、買手が長期的に伴走する。非介入型は資本関係を通じた補完的な資源活用を目的とし、介入を最小限にとどめ、課題が顕在化した局面で対応する。


著者名   久保 雄一郎

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