過去の神戸大学MBA公開セミナー
第27回:2018年7月11日(水)18:30~19:45
育薬に特化した製薬企業の創薬への道:新旧バイオ医薬品から学ぶ創薬と育薬とのバランスの重要性
発表者:久保純氏(2017年度加護野忠男論文賞受賞者、神戸大学MBA修了生)
場所:神戸大学梅田インテリジェントラボラトリ(梅田ゲートタワービル8階)
7月の神戸大学MBA公開セミナーでは、本学MBA修了生で、2017年度加護野忠男賞受賞者の久保純氏が、受賞論文のエッセンスを語ります。
製薬メーカーは従来のように画期的な新薬を世に出し、これを長期にわたって維持するというビジネスモデルが成り立たなくなろうとしています。その背景には、新薬創出加算、後発医薬品促進策など近年の医療制度改革や、2000年以降のバイオ医薬品の台頭などがあります。
講演者の久保氏は、血漿分画製剤を扱う国内メーカーに勤務しています。同社のバイオ医薬品にカテゴライズされる血漿分画製剤は、戦後の黎明期を経て1980年代に最盛期を迎えました。しかし、感染症対策が必要になり、遺伝子組換え製剤に代表される新たなバイオ医薬品への置き換えに対応できず、薬価は引き下げられ続け、現在は苦境を強いられています。そして、連産品である上に、代替え薬のない製品もある為「採算が合わないから撤退」という選択もできません。その結果、同社はこの30年は育薬に注力し、それまでにあった製品を維持する戦略をとるようになりました。しかし、時代が進み、新たなニーズに答えるために創薬を試みるも、長年育薬が定着した組織ではこれがなかなか成就しないという現実に直面しています。
そこで久保氏は、血漿分画製剤を提供する2社から共に製品寿命が38年の免疫グロブリン製剤を2つと、大手製薬会社2社から製品寿命が16年と4年の遺伝子組換え抗体医薬品を2つ取り上げて、事例研究を行いました。そこから、創薬と育薬の対比を行い、創薬イノベーションと育薬イノベーションの相違点を明らかにし、育薬に傾倒すると創薬が難しくなる所以について考察しました。
本セミナーでは本事例研究を基に、創薬と育薬について議論を進め、企業のイノベーションの源泉となる研究開発への認識を深めていきたく思います。
当日のプログラムは以下の通りです。
- 18:30-18:35 挨拶、概要説明
- 18:35-19:20 講演(久保氏)
- 19:20-19:45 質疑応答
募集人数は110名です
開催場所:神戸大学梅田インテリジェントラボラトリ