経営者の埋め込みとエントレンチメント-企業ガバナンスへの複眼的アプローチに向けて-

要約

企業ガバナンス論では、経営者を「株主や従業員から“隔てられる”ことによって自らの地位に安んじ、あるいはそれを濫用しうる『エントレンチされた』経営者」とみなし、それをいかに規律づけるかが問題とされる。経営者にそうした側面があることはもちろんだが、しかし同時に、経営者は「株主や従業員との相互作用を通じて、彼らとの関係に『埋め込まれた』経営者」という側面をも併せ持っているのではないだろうか。本稿ではこれまでのガバナンス論であまり注目されなかった後者の側面に主として光を当てることで、経営者のもつ両面性(埋め込みとエントレンチメント)を浮き彫りにする。このような経営者像からは、他律的統治に自律的統治も加えた「複眼的アプローチ」をとることが企業ガバナンスの議論には必要であることが示唆される。

キーワード
埋め込まれた経営者、エントレンチされた経営者、自律的統治、他律的統治

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田中一弘

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