双対原理の2つの組織モードと個人情報の非対称性

要約

日本(J企業)とアメリカ(A企業)の組織モードを情報管理・計画機能(I)と人事管理特性(P)の2つの軸で識別すれば、J企業はIのライン分権化(DI)とPの本部集中化(CP)、A企業はIの本部集中化(CI)とPのライン分権化(DP)という特徴を有している(双対原理)。本稿では、本社人事部と事業部門の異動の力学を規定する個人情報の非対称性が生成するメカニズムにJ企業の強みが隠されていることを明らかにする。日本とアメリカ資本日本法人の2社の小売業のケース分析から以下の結論を得た。1)本社人事部と事業部門の個人情報の非対称性はCPのJ企業において生じる。2)しかし、日本で事業展開するゆえにDPのA企業にも個人情報の非対称性にかかる問題が発生している。3)J企業が人事権を人事部の留保することは労働市場の特質や解雇法制にたいして戦略的に補完的になっている。4)アメリカに普及する基幹系業務システムが導入されるとJ企業もA企業の組織モードに移行する。しかし制度的補完性に基づきそれを抑止しようとする慣性力も相当ある。5)今後J企業の個人情報の非対称性の一層の拡大が予想される。その解消のためにJ企業はコア人材の絞込みや社内公募制度を導入しようとしている。あわせて個人の側にも自主自律のキャリア意識が要請される。

キーワード
個人情報の非対称性、双対原理、制度的補完性、戦略的補完性、統合型キャリア開発、
分離型キャリア開発

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平野光俊

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