企業間取引におけるコンテクスト共有の意味 −在中日系自動車メーカーのサプライ・システム−
要約
本研究では、日系自動車メーカーの中国進出パターンと、中国における部品調達の実態を明らかにし、日本的な企業間調整がどの程度実施されているかについて考察を行う。そこでは、基本的に、従来から取引のある日系部品メーカーを中心としたサプライヤー・システムが構築されており、日本における部品メーカーとの調整メカニズムを、中国でも実施しようとしていることが明らかにされた。その理由として、属人的要素が強く関わる日本的な経営システムを十分に機能させるためには、互いにコンテクストを共有している日系企業を中心とする企業間取引が必要となることが指摘できる。しかし、同じようにコンテクストを共有する傾向がある日本と中国では、異なる部分も指摘することができる。すなわち、コンテクストの共有の仕方が異なっている可能性がある。「意」の文化に根ざしている中国では、関係を維持しながら、コンテクストを共有する傾向がある。しかし、関係が強くなりすぎるがゆえに、不正や癒着が生じるという問題もある。他方、日本では、コンテクスト共有を行うが、定期的に関係をリニューアルしたり、私的な関係と公的な関係を明確に区別したりする傾向がある。中国ほど、関係の維持から得られるコンテクスト共有のメリットを享受することができない可能性があるが、馴れ合いを防止し、関係に緊張感を与えることができる可能性を指摘することができる。
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高瑞紅 |
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