明治初期の陶磁器産業における会社の運営原理

要約

明治初期の陶磁器産業で成立した会社を事例としてとりあげて、当時の会社がどの様な運営原理によってマネジメントされていたのかを明らかにしている。それによると、当時の会社は資本の原理によって運営されていたわけではなく、人的原理によって運営されていたことが明らかにされた。当時の会社は様々な意見対立によって会社が分裂するという現象が多くみられたが、その背後には、以上の様な運営原理がみられたのである。資本の原理によって運営されていたならば、そもそも意見対立は出資額の多寡によって解決されなければならなかった。しかし、この様な便宜的手段は当時の会社では通用しなかった。出資はあくまでメンバーシップを代表するものであり、出資額の多寡は利益分配の権利を代表するものであって、議決権に関連付けられたわけではなかった。会社の設計思想そのものが、資本の原理による運営を想定する枠組みではなかったのである。出資によって会社を所有するという観念そのものが希薄であったためであった。会社の所有はあくまで出資者・経営者の間での共同所有であったのである。

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柴田淳郎

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