制度変化の理論化: 制度派組織論における理論的混乱に関する一考察

要約

制度変化の理論化のために本稿では制度派組織論に見られる三つの理論前提(技術的効率性・内生的矛盾・埋め込まれたエージェンシーのパラドクス)を巡る混乱を批判的に検討する。第一に、技術的効率性を社会的正統性と対立する基準としてではなく、それ自体正統化された基準として捉えること。第二に、制度の内生的矛盾は制度に対する何がしかの本質的前提を置いた議論でなく、正統性の多様な解釈を担う利害に基づいた絶えざる変化プロセスとして捉えること。第三に、制度変化における行為者の位置づけも、制度から距離を置いたエージェンシーを想定するのではなく、矛盾を孕んだ多様な制度の中でアイデンティティを構成し、自らの目的達成のために制度をアレンジしていく主体の行為戦略に注目すべきことが検討される。これら理論前提に対する検討を敷衍して、制度変化に対する今後の研究方向性として具体的なアジェンダの再定位が示される。

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松嶋登

浦野充洋

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