人材ポートフォリオの動態的・個別的マネジメント ―HRM方針と非典型労働者の態度のギャップの経験的考察―

要約

現代の日本企業には、正社員と非典型労働者といった雇用形態を基軸とした単純な二分法ではなく、多元化した「働かせ方」(HRM方針)と「働き方」(労働者の態度)をうまく組み合わせる人材ポートフォリオのモデルが求められている。本稿の目的は、第1に理論的な検討のもとにこのモデルを構築すること、第2にモデルの妥当性と機能性を質問紙調査のもとに検証することである。調査の結果、1)本稿で主張する「人材ポートフォリオ・モデル」は非典型労働者の「働かせ方」の実体をうまく説明できること、2)非典型労働者は事業所が求めている以上に特殊技能の習得等に意欲的であること、3)非正社員のチームワーク的仕事への選好と特殊技能の向上意欲はそれぞれ均衡処遇の同時結合によって生産性にプラスの影響を与えることを検証した。調査結果は、現代の日本企業は非典型労働者を十分に活用していないということ、および非正社員の意欲に報いるように均衡処遇を施せば生産性が向上することを示している。以上のことから、本稿は、特殊技能の発展および仕事内容の高度化にたいする労働者個別の態度に応じて象限を移動する「人材ポートフォリオの動態的・個別的マネジメント」を提唱する。

人材ポートフォリオ、人的資源特殊性、労働関係分離不可能性、均衡処遇

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平野光俊

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