組織行動論 (organizational behavior: OB) への時間展望概念導入の試み―「希望の心理学」適用のための理論的考察と予備的実証分析―

要約

本稿の目的は,経営学の中でも,組織の中で起こる様々な人間の行動を科学的に理解しようとする組織行動論 (organizational behavior: OB) の領域に時間展望概念を導入することの意義について理論的・実証的に考察することである。とりわけ,本稿において注目する時間展望は,個人の行動に影響を与える未来である。それゆえ,本稿では,心理学の領域で研究蓄積が多いゴール研究に焦点を定めている。具体的には,パーソナル・プロジェクト(personal projects)とパーソナル・ストライヴィング(personal strivings),ポッシブル・セルブズ(possible selves)の3つのゴール研究である。次に,レビューで検討された時間展望概念が,組織行動論のトピックであるモティベーション,組織社会化,組織コミットメント,心理的契約,ポジティブ心理学などとどのように関連してくるのかを考察している。続いて,質的・量的データを用いながら時間展望に関する予備的な実証分析が行われ,今後の展望が示されている。
本稿を契機に,キャリア,モティベーション,リーダーシップ,組織と個人のかかわり合いなどの組織行動論の中心的分野に,いわば「時間展望学派」が生まれることを,希望したい。

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尾形真実哉

金井壽宏

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