監査人の独立性に関する先行研究のレビュー ―監査人の受け取る報酬の観点から―

要約

監査人による独立性(精神的独立性と外見的独立性)の保持は、かねてより監査分野において議論されてきた、重要かつ難解な議論の1つである。専門能力と知識を身につけた監査人が独立の立場から提供するものでなければ、監査が社会において受容されることはない。その反面、監査人の独立性は本質的に可視化できないのである。当然ながら、可視化できないものに対して、どういった要因が影響を及ぼすかを特定するのは困難を極め、これまでに行われてきた研究でも、具体的な結論を導き出すには至っていない。ここに、監査人の独立性に関する議論が、重要でありながら難解なものとなってしまう理由がある。しかし、ここ数年、大規模粉飾事件の背景等から、監査人の受け取る報酬が独立性を阻害しうる要因の1つとして特に注目されている。米エンロン社のように、監査人も関与したことで知られる大規模粉飾事件では、(非)監査業務に対して多額の報酬が支払われていたことが判明したからである。そこで、本稿では監査人の独立性に影響を及ぼす要因として監査人の受け取る報酬を利用した先行研究をレビューする。ここ数年で矢継ぎ早に公表された先行研究の分析フレームワークや結論を要約し、今後の研究に対する展望を提示することが本稿の目的である。

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高田知実

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