公募増資発行日における需要曲線右下がり効果及びプライスプレッシャー効果についての検証
要約
公募増資発行日(発行日)に需要曲線右下がり効果(DDM効果)や新株発行に伴うプライスプレッシャー効果(PP効果)が生じているか,1998年から2009年に日本で公募増資した企業を用いて分析した.米国では価格算定日の次の日が発行日であるが,日本は発行日と価格算定日の間に5営業日以上期間が空いている.価格算定日にはManipulativeな空売りに伴うPP効果が存在することが指摘されている.このManipulativeな空売りによるPP効果は,DDM効果や新株発行に伴うPP効果と同様に大規模な発行に伴って生じることが指摘されている.これまでの研究では,発行日におけるDDM効果や新株発行に伴うPP効果をManipulativeな空売りによるPP効果から分離して検証することができなかった.日本では発行日から価格算定日にかけて期間が空いているため,Manipulativeな空売りによるPP効果を分離して分析することができる.主な検証結果は,発行日には1.79%,アナウンスメント日に3.03%,アナウンスメント日から発行日後10営業日では8.74%ほどアブノーマルリターンが下落していることがあきらかになった.こうしたアブノーマルリターンと発行規模の間には負の関係がみられることがわかった.発行規模とアブノーマルリターンの下落の関係はアナウンスメント日のみならず発行日当日において強い関係があることがわかった.しかしながら,発行規模と発行日後のアブノーマルリターンの間には統計的に有意な関係はみられなかった.こうした結果は,発行日には新株発行によるPP効果は生じず,DDC効果のみが生じているという考えを支持するものである.増資規模が公表されたときに十分に株価に反映されないことは,市場の非効率性を裏付ける新たな結果といえる.
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鈴木健嗣 |
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