(調査報告)老舗建築企業の競争戦略-伝匠舎 株式会社 石川工務所 石川重人氏にきく-

要約

本稿は、平安時代から山梨の地で連綿と寺社の建設、修復に携わってきた石川家、伝匠舎株式会社石川工務所の代表取締役社長石川重人氏への「長期存続」をキーワードとしたインタビュー、アンケート、史料調査等の報告を主たる目的とするものである。
これまで、われわれはいわゆる「老舗企業」あるいは「長寿企業」などと呼ばれる企業活動に注目し、とりわけ宮大工企業にかんする研究を進めてきた(曽根・吉村, 2002; 曽根, 2004; 曽根・加護野2007; 曽根2010など)。これらの先行研究の内容の事実確認や新たな発見事項についてインタビューや史料調査等を通じて行った。これらは今後の長期存続企業の研究にとって一つの足がかりとなる重要な基盤となるものである。
本調査を通じて、前近代より石川家では、存続にかんするリスクの分散を3つの石川一族内で行ってきたことがわかった。また、組織構造は、主に顧客関係に規定され、上手な棲み分けがあると同時に、技能の修得・継承には競争的契機が埋め込まれていた。
古文書にかんしてもこれまで確認されていた江戸中期の三郡出入りの大工間の紛争史料だけではなく、その後の和解にかんする史料等も新たに発見し、解釈を加えることが出来た。

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曽根秀一

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