大丸百貨店における営業戦略改革-人事管理との補完性の観点から-
要約
バブル経済崩壊以降の長期不況に伴う消費の低迷や小売業態の多様化の潮流において多くの百貨店が新たなビジネスモデルの構築を試行している。大丸百貨店では1998年頃から全社的な営業改革および組織改革を段階的に実践してきた。第1次改革とよばれる取り組みにおいては主に店舗業務の整理,取引先との役割分担の再構築が実施された。業務の徹底した「見える化」や重複業務の排除を徹底することによる組織全体の効率化が進められることとなった。また,2000年頃からはこれらの営業改革に連動する形で従来の人事制度にもいくつかの変更が加えられることとなった。第2次改革においては主にマーチャンダイジング(MD)プロセス変革が推し進められた。その取り組みを一言で表すならば,セントラル・バイイングの実践とそれに向けた組織変革である。百貨店における中核業務の一つである「仕入れ」に関して本部と店舗のさらなる分業,権限関係の再構築による競争力強化の試みである。これらの一連の改革は成果をあげた一方でいくつかの課題も残すこととなった。とりわけセントラル・バイイングの仕組みと大丸組織内における分業・調整のあり方の関係,あるいはそれに伴う人事管理との整合の問題である。本稿は、組織と人事管理の補完性という観点から大丸の一連の改革における成果と課題についての議論の素材を提供することを目的としている。
著者 | PDFへのリンク |
---|---|
千田直毅 |
(435.8KB) |