解決志向マネジメントの効果に関する定量的研究―自動車ディーラーにおける進取的行動への影響―

要約

 本論文では、職場における解決志向マネジメントが進取的行動に及ぼす影響を定量的に研究している。解決志向マネジメントあるいはマネジメントにおける解決志向アプローチとは、過去の問題や短所ではなく、望ましい未来と長所に焦点を当て、そこを伸ばすことで問題解決を図るアプローチである。このアプローチは、近年実用的かつ効果的な手法であることが認められ、90年代後半ごろから会社組織のマネジメントや組織改革で急激に用いられるようになった。
 しかし、その有効性は認識されつつあるものの、研究はまだ初期段階である。本稿では、自動車ディーラーA社を対象に質問票調査を行い、解決志向マネジメントの有効性について検証を行う。質問票の配布・回収時期は、2016年1月である。拠点数83、1308名のデータを用いて分析を行った結果、解決志向アプローチを構成する二つの因子である問題点追求と可能性追求は、進取的行動に有意な影響を与えていないことがわかった。口語作用を見ると、目標依存性と可能性追求の交互作用が、有意な影響を与えていることが明らかになった。
 これらの発見事実から、解決志向アプローチは、進取的行動に直接効果があるとは言えなかった。しかし、解決志向アプローチの可能性追求は、目標依存性が高い場合に進取的行動を促すことが示唆された。逆に、目標依存性が低い場合、可能性追求は進取的行動を抑制する傾向があることが示唆された。

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北居明

鈴木竜太

上野山達哉

松本雄一

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