企業のグローバル化と現金価値 -資金制約と潜在成長性の寄与-
2019・22
要約
本研究は、日本企業のグローバル化が、現金保有と企業価値に与える影響を明らかにする試みである。現金保有の予備的動機は将来の資金不足リスクに対する懸念から生じるが、将来に現金を持ち越すことによって資金不足リスクが投資や事業活動に与える影響を極小化し、投資等を実現して企業価値を向上させる。予備的動機を生起する要因として資金制約と潜在的成長性に焦点をあて、これらの要因が現金保有と現金価値に及ぼす影響を日本企業のグローバル化に関連付けて実証的に分析する。2001年から2015年の日本の上場企業34,630社・年のパネルデータを検証して、以下の事項を明らかにする。①高度にグローバル化した日本企業は、資金制約でなく潜在成長性に基づき現金保有を増加させる。②日本企業のグローバル化と保有現金の市場価値を関連付け、グローバル化が保有現金の価値を高めることを明らかにする。そして現金価値が増加する原因は、資金制約でなく、トービンのqで測られる潜在成長性であることを示す。
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梅根嗣之 |
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