国の競争優位と戦略投資

2024・06

要約

本稿は、米国の経済発展の基礎を整えた内国改良システムの開発へ焦点を当て、国の競争優位と戦略投資について議論する。国レベルの戦略投資には必要な資金量が多く、政治及び社会的要因に大きく影響される。それと同時に、戦略投資により裏付けられる国の競争優位は確立すれば持続可能なファイナンスを通じて拡大、維持できるので、逆転されにくい特徴を持つ。本稿ではエリー運河を中心に、プロジェクトが開発された経緯に基づいて、戦略論と制度論の観点から戦略投資と国の競争優位の構築について分析する。
国レベルの戦略投資はプロフィット・センターの構築を目指すが、収益性よりは福祉性を重視する。資本主義の国において、国レベルの戦略投資により形成するプロフィット・センター・ポートフォリオは共同の資金源を共有しないことが多いので、キャパシティには連動性を持たない。つまり、戦略投資のポートフォリオ・プランニングの観点から、国の競争力を裏付けするキャパシティは相互に影響しない可能性が大きいと同時に、代替可能性が低い。個々のプロフィット・センターの収益性はその他のプロフィット・センターへ限られた影響を与えるので、収益性が低いプロフィット・センターの存在による国家経済の全体へ与える負の影響は、企業におけるプロフィット・センター・ポートフォリオの場合より波及効果が小さい。
制度論の観点から、国レベルのキャパシティを構築し、国の競争優位を確立、拡大、維持するためには機関のインタラクションによる相乗効果を発揮すべきである。国レベルのプロフィット・センター・ポートフォリオを構築するためには複雑な資金調達の仕組みが必要であると同時に、諸機関の連携と相乗効果が必要不可欠である。国際競争環境における国の競争優位を裏付けるキャパシティを構築する観点から諸機関の組み合わせを最適化することは、持続可能な国の競争優位を構築するための重要な課題である。

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張 嘉楠

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