経営学研究科博士課程は、経営学等の高度な研究能力を必要とする仕事をしようとする人に、その能力を与える、専門的で高度な大学院教育課程です。そのような仕事には、今日、大まかに3種類があります。
その第1は、経営学・会計学・商学ないし市場科学等の学問の発展に貢献する学術研究の仕事です。この学術研究の人材を育成することは、神戸大学大学院経営学研究科が創設以来今日に至るまで、経営学研究科博士課程の中心的な目的です。
学術研究以外の、第2の経営学等の高度な研究能力を必要とする仕事には、経営現象を分析する上で経営学等の科学的方法を利用する、さまざまな分野のシンクタンクが行う調査研究などがあります。
第3に、ますます高度化する21世紀の産業社会では、経営学等の高度な研究能力は、学術研究や応用研究にとどまらず、産業や経済の実務においても必要とされるようになってきています。公認会計士を初めとする会計専門職やファイナンス専門職といった個別専門分野の高度な知識が必要となる職業はもちろん、さらに経営者やコンサルタントなどの総合的な職能においても、博士レベルの高度な研究能力を保有した人材が求められるようになってきています。こうした人材を育成することも、経営学研究科博士課程の目的の1つに加わっています。
経営学研究科博士課程は、これらの目的を達成するために、教育課程を前期課程(2年)と後期課程(3年)の2段階に分けて、教育を行っています。そして、それぞれの課程について、その教育の目的をより細かく次のように定めています(神戸大学大学院経営学研究科規則)。
(1) 前期課程の目的
経営学・会計学・商学全般及びそれらに関連する基礎的学問分野の高度な専門知識を持ち、経営学・会計学・商学の特定の専攻分野において、新たな科学的知見を生み出す科学的方法論を修得し、大学、研究機関及び産業界で当該分野の発展に寄与する人材を養成することを目的とする。
(2) 後期課程の目的
わが国における経営学・会計学・商学のCOE(Center of Excellence)として研究科で行われる先端的研究を通じて、 経営学・会計学・商学の特定の専攻分野において深い専門知識に精通し、独創的研究を行う人材を養成し、当該人材が、大学や研究機関等において当該分野の高度な研究・教育に従事し、その発展に主導的役割を果たすとともに、 その成果を世界に及ぼし、人類の進歩と発展に寄与することを目的とする(注1)。
(神戸大学大学院経営学研究科規則)
(注1)COEとはCenter of Excellenceの略で、中核的研究教育拠点を意味する言葉です。神戸大学大学院経営学研究科は、1953年にわが国最初の経営学系大学院として経営学・会計学専攻と商学専攻の修士課程、博士課程を設置して以来、わが国における経営学・商学の中核的な研究拠点でした。神戸大学大学院経営学研究科は、その実績の上に、さらに国際的レベルでの中核的研究拠点をCOEと呼んで、COEを目指して教育と研究の体制整備を行うことを1992年度自己評価・外部評価報告書『経営学におけるCOEをめざして』で内外に宣言しました。