伊賀隆賞、第9回が授与されました
伊賀隆賞は、1971年から1990年の19年にわたり神戸大学経営学部経営数学講座の教授として経営数学分野の教育研究に尽力された伊賀隆先生を記念し、神戸大学経営学研究科において経営の数理・数量的研究の分野で優れた研究成果をあげた学生を表彰するものです。伊賀隆先生が2013年2月に亡くなられたおりにご遺族から神戸大学経営学研究科の発展のためにとのご寄付がありましたので、一周忌にあたる2014年3月にこの賞を創設して、毎年課程博士号を授与される学生のうち賞の趣旨に該当する学生があれば1名を選んで表彰し、ご遺族の寄付を基金として副賞を贈呈することにしました。
第9回伊賀隆賞は、Studies on understanding the nature of competitionの題目で、市場競争のあり方に関する実証研究の成果を挙げた水田誠一郎君に授与されました。特に、アルミニウム精錬産業における参入阻止行動についての研究が審査員からの高い評価を受けました。市場に参加している既存企業が潜在的ライバルの市場参入を阻止するための特別な行動をとっているかどうかを確かめることには、多くの困難が伴います。水田君は、限界費用が異なる企業によってクールノー競争が行われている市場で、既存企業が潜在的ライバルの市場参入を阻止する生産量を選んで成立する均衡の部分識別可能性を理論的に示し、我が国の戦後のアルミニウム精錬産業について、既存企業の行動が(1)クールノー均衡、(2)参入阻止行動の均衡、(3)完全競争均衡のいずれで最もよく説明できるかを、これら(1)(2)(3)のモデルを構造推定した上で、non-nestedの関係にあるモデルのデータ説明力を相互比較するVuongの方法で検証し、1955-1973の期間では参入阻止行動だったが、オイルショック後の1974-1980の期間ではクールノー均衡だったことを示しました。これは、ゲーム理論と計量経済学の知見を総合して現実の市場競争を理解する研究ということができます。授与式は、2022年3月25日に経営学研究科長室で行われました。
左から、南 知惠子経営学研究科長、水田誠一郎さん
神戸大学経営学研究科は、経営の数理・数量的研究の分野の優れた教授陣を擁しており、これからもこの分野で優れた研究者を育成し、わが国の経営学の発展に寄与していこうと考えています。伊賀隆賞は、そのような将来有望な研究者に引き続き授与される予定です。