基本理念

神戸大学経営学研究科・経営学部は、日本における経営学・商学の中核的研究教育拠点(COE)として、「学理と実際の調和」という建学の理念の下、神戸高等商業学校の伝統ある系譜を汲み、産学連携をとりわけ強く意識しつつ産業界をリードする人材の養成を手がけてきました。経営学という学問領域の特性もあり、研究者は企業等での最先端の事象を取り入れ実証研究を行い、産業界はその研究成果を企業活動に活用できるというように両者が一体化され、運用される工夫が着実に積み重ねられてきました。こうした学界と産業界の連携は、本研究科の目指す産業社会との相互協力と相互批判を通じて研究を進め、その成果を学内外で教育するとともに社会還元していくという「オープン・アカデミズム」という理念によって端的に表現されています。また、本研究科の教育活動は、研究科に蓄積された教員個々の研究活動の成果を学問的・理論的基礎とする「研究に基礎を置く教育(Research-based Education)」を基本としています。

教育面での強み・特色

学士課程

神戸大学経営学部は経営学・会計学・商学の領域において深き学識と高度で卓越した専門的能力を身につけ、人間性、創造性、国際性にも優れ、知的リーダーシップを発揮できる人材を育成するための体系だったカリキュラム編成をしています。
そして、標準的なカリキュラムに加えて多様な専門教育プログラムを有しています。それらは、経営学の科学的アプローチに基づいたデータ分析能力を持った人材を育成する経営データ科学特別学修プログラム(DSP)、公認会計士の養成を目的とする会計プロフェッショナル育成プログラム、留学を通じて国際社会に通用する人材の育成を目指すKIBER (Kobe International Business Education and Research) プログラム、経営分野でグローバルな高度専門職人材を育成する5年一貫の学士・修士教育を行うKIMERA (Kobe International Management Education and Research Accelerated)プログラムです。それぞれの説明は以下のとおりです。

経営データ科学特別学修プログラム(DSP)

神戸大学経営学部の経営データ科学特別学修プログラム(学部DSP)は、経営学の科学的アプローチに基づきデータ分析を行うために必要な能力を育成するプログラムです。「経営データ分析(入門演習)」と各分野の「経営データ分析」の講義を通じ、経営学の理論に基づき、データの意味を理解し、データを用いて理論を検証し、検証結果から実践的示唆を導き出せる人材を輩出することを目指しています。学部DSPは、大学院博士前期課程のプログラム(修士DSP)と接続しています。「経営データ科学5年一貫プログラム(5年一貫DSP)」に所属すると、学部早期卒業(3.5年)と博士前期課程早期修了(1.5年)を組み合わせ、課題設定能力とデータ整備能力を含め、データ分析に必要な高度な能力を5年で身に付けることができます。5年一貫DSPは、神戸大学経営学部・大学院経営学研究科の看板プログラムの1つです。

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会計プロフェッショナル育成プログラム

在学中の公認会計士第2次試験または税理士試験合格を目指すとともに、職業会計人に要求される高度専門知識の習得を目的として開設しました。開設以来、公認会計士合格者数は定常的に全国10位内にあります。

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大学別合格者ランキング上位10大学

大学別合格者ランキング上位10大学

※ 公認会計士三田会(http://cpa-mitakai.net/index.html)の公開資料より作成

Kobe International Business Education and Research(KIBER)/ Kobe International Management Education and Research Accelerated Program(KIMERA)プログラム

KIBERプログラムは、国際社会と文化を理解した、グローバルな社会環境で活躍できる経営人材を育成することを目的としたプログラムで、交流協定を活用した1年間の留学と留学時に必要な英語でのコミュニケーションスキルについての授業(すべて英語で実施)を追加しつつ、4年間で学部を卒業できるようカリキュラムを整備しています(交換提携校は令和6年度で世界26大学)。また、KIMERAプログラムは、学部の2年生からKIBERプログラムに属して、3年生の後期から1年間、海外パートナー・スクールへ留学し、早期修了に必要な単位を修得して、3年半で学部を卒業し、その直後に、経営学研究科の異分野共創型卓越人材育成プログラム(Kobe University Interdisciplinary Master Program, KIMAP in Management)に秋入学して、1年半で修士号を取得するプログラムです。合計5年間で経営学の学士号と修士号を取得します。経営分野でグローバルな高度専門職人材を育成することがKIMERAプログラムの目的です。

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(2024.8更新)

博士課程

体系的コースワーク

博士課程の前期課程では、研究者としての基礎的な知識を修得するための第1群科目(特論)、体系的な研究に不可欠な方法論を修得するための第2群科目(方法論研究)、基礎科目である第1群から更に進んだ内容や分野横断的な内容、先端的な研究成果について講義を行う第3群科目(特殊研究)及び研究論文(修士論文)の作成指導を行う第6群科目(演習)を中心とするコースワークによる体系的な教育を行っています。学生にはカリキュラムの特性を十分に理解し、適切に科目履修できるよう、10の代表的な研究分野について標準的な履修モデルを提示しています。

達成すべき能力の段階的評価

経営学研究科ではわが国における経営学系研究者の養成を重要な目的としていることから、研究者希望の学生に対しては基本的に前期課程(2年)と後期課程(3年)の5年一貫教育プログラムを構成し、段階的にその能力を確認する仕組みを整えています。前期課程の修了に必要な単位を修得しただけでは後期課程への進学は認められず、第1群科目と第2群科目に対応した「総合学力試験」と呼ばれる試験に合格する必要があります。これは、学生が単位修得によって得た学力を、更に博士論文作成のために必要な水準にまで拡張する能力をもっているかどうかを判定するためで、従って単位修得のための試験よりも若干難易度が高めに設定されています。また、後期課程においては、論文作成セミナー、博士候補者資格論文の作成、博士候補者ワークショップ、博士論文発表会、博士論文仮審査という段階を設定し、これらの仕組みにより、本学で学位を取得される方の質が保証されています。

博士課程のカリキュラムマップ

Strategic Entrepreneurship and Sustainability Alliance Management Initiatives (SESAMI)プログラム

共生の経営学(Sustainability Alliance Management)と創造の経営学(Strategic Entrepreneurship)が融合した戦略的共創経営という研究教育領域を定義し、新規事業を「創造」し、かつ「共生」を推進する能力を兼ね備えた戦略的経営の専門家(戦略的共創経営人材)を養成することを目的として平成25(2013)年度から開始したプログラムです。海外のジビネス系スクールの教員を多数招へいし、すべての授業を英語にて実施するとともに、国際展開企業と連携した実践的課題解決能力を育成するプロジェクト研究や海外大学と連携した海外実習等を通じて、実践に即した理論構築能力を養成しています。

研究者養成の実績

神戸大学大学院経営学研究科で学位等を取得し、大学の研究者となっている者は多数に及んでおり、特に、経営学の諸分野における人材の輩出率は全国トップ水準にあります。

大学研究者の出身大学院別比率(最終学歴、学位取得先)

(research mapより作成 2024.5更新)

専門職学位課程MBA HP

働きながら学ぶ

経営学研究科では、全国の国立大学に先駆けて、平成元(1989)年度から社会人MBAプログラムを提供しており、平成15(2003)年度の専門職学位課程制度開始時から新たな学位課程として教育を実施しています。本プログラムは、「働きながら学ぶ」、「研究に基礎をおく教育」、「プロジェクト方式」を特徴としており、企業等で現に働いていることを入学の条件としています。「働きながら学ぶ」ことのメリットは、具体的な職場の問題を学術の分野に持ち込むことで、理論を応用しながらより深く考えられることにあります。また、多忙な社会人のニーズに応え、平日夜間と土曜日だけで1年半で修了することができるよう設計されています。平日の夜間はオンラインにて講義を行い、時間的余裕の少ない社会人に配慮しています。

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プロジェクト方式

「プロジェクト方式」は経営学研究科がMBAプログラム創設以来30年以上をかけて編み出してきた教育方法で、産業界で解決すべき課題について、5ないし6名の学生からなるプロジェクトチームを編成し、学生相互間及び教授陣・学生間でお互いに知恵を出し合いながら、共同研究により解決策を探求するものです。異業種・異なる世代の学生同士によるディスカッションを通じて多様な視点、説得の技法など、理論と実務を融合させ専門知識を深化させ、適切な判断を下せる能力を磨く仕組みが取り入れられています。

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講義課目の抜本的改革

神戸大学MBAでは、MBAの価値を広く社会に伝えるための施策の一環として、文部科学省からの委託を受けてビジネス系大学院にとって共通となるコアカリキュラム体系の在り方を検討し、全国のビジネス系大学院にそのモデルを提示しています。神戸大学MBA では「ヒト」「モノ」「カネ」という経営の基本的要素を中心にコアとなる5科目を配置し、これに先に説明したプロジェクト科目とその他の専門科目(トピックスや最先端研究成果科目)を加えたカリキュラムを展開しています。また、提示しているモデルでは、授業において使用するテキストの指定(海外トップクラスMBA と同様のテキスト)、ケーススタディで取り扱う企業(国際展開企業中心)も明示し、科目名称の羅列ではなく、実効性のあるクオリティ・コントロールにまで言及している点が大きな特徴です。

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日英産業事業応用研究

本研究科では、数多くの大学と交流協定を結んでいます。日英産業事情応用研究という授業では、英国の提携校であるクランフィールド大学(Cranfield School of Management)と共同で講義を設計し、同大学MBA生と共に参加する海外研修プログラムを毎年実施しています。

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論文賞や優秀賞による顕彰

平成20(2008)年度より本研究科名誉教授の名を冠した「加護野忠男論文賞」を創設し、優れた論文を顕彰しています。本賞の創設により修士論文に学生が意欲をもって取り組むよう後押しするともに、授賞式に次年度の入学生も参加できる仕組みにすることで、入学後自分たちがどのようなレベルに到達しなければならないかを学ぶ機会にもなっています。
平成29(2017)年度より始まったカリキュラムのもとで、コア科目5教科で全て優以上の学生は優秀MBA賞として表彰しています。また、2つのプロジェクト研究でそれぞれ3位以内に入賞し、修士論文がゼミ内上位2位の学生は三冠王として表彰しています。令和5(2023)年度は、三冠王として4名の学生が表彰されました。

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(2024.8更新)

研究面での強み・特色

研究拠点としての強み

経営学研究科は、日本の経営学・会計学・商学(以下、経営学と総称します)の中核的研究拠点としての長い歴史を今も紡ぎ続けています。特に、経営戦略、経営管理、人的資源管理、財務会計、管理会計、社会会計、マーケティング、ファイナンス、交通などの経営学の主要領域において国内でトップといえる研究陣を擁しており、さらに環境会計・経営、アントレプレナーシップ、サプライチェーン、コーポレートガバナンスなどESG(Environmental, Social, Governance)規準やSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)などの時代の要求に合った研究も多く進めています。

また、研究科内には産学連携の附置センターとして、ファミリービジネス研究教育センター・中小M&A研究教育センター・人的資本経営研究教育センター・ビジネス価値共創研究教育センターを設置し、ファミリービジネスの健全な発展、M&Aを通じた中小企業の円滑な事業承継の促進、人的資本経営の普及、価値創造といった、社会課題の解決に資する研究にも取り組んでいます。経営学研究科はこれらの研究力を活かし、海外の優れた大学や研究機関との連携・交流を促進し、経営学の研究教育のグローバルレベルの中核的拠点を目指しています。さらに、社会科学系分野の学際的研究を行う社会システムイノベーションセンターを活用し、社会システムイノベーションを通じて社会課題の解決に貢献する文理融合研究に参画しています。また、令和5年度「人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業」に採択され、小樽商科大学、和歌山大学とともに対話型ビジネス価値共創人材の養成にも取り組み、「学理と実際の調和」の具現化にも努めています。また、経営学研究科の優れた研究力は、いくつかの指標からも伺い出来ることができます。

関連リンク
研究科内センター

論文数等の推移

社会科学の1つである経営学の研究は、自然科学と比べると概念や理論、研究方法が多様で説明が多く必要となり、また研究対象も多くの要因が複雑に絡み合っているため、論文の記述が長くなり、1本の論文を仕上げるのに時間がかかる傾向があります。また、多くの著作が単著であることも特徴です。経営学研究科には約60名の研究者が配置されていますが、平均で一人年間3~4件の研究業績を継続的に出しているということは、研究領域の特徴を考慮すれば十分だといえるでしょう。

研究実績(論文数・著書数・学会発表数)の推移

  2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
論文数 123 114 77 84 89
著書数 11 18 11 18 17
研究発表数 65 18 57 46 47
合計 199 150 145 148 153

科研費の獲得

経営学研究科の研究力の強さは、下の科学研究費補助金(以下、科研費)等の外部資金の獲得状況からも見ることができます。科研費の新規の採択率は、神戸大学全体と比較して高い水準にあるほか、研究分野ごとに見ても、全国トップクラスを維持しています。

科研費の採択状況(神戸大学全学、経営学研究科)

中区分別採択件数上位10機関(過去5年間(令和2~6年度)の新規採択の累計数)
経済学、経営学およびその関連分野

順位 機関名 順位 機関名
1 一橋大学 6 京都大学
2 早稲田大学 7 大阪大学
3 神戸大学 8 立命館大学
4 東京大学 9 中央大学
5 慶應義塾大学 10 関西大学

学会役員・編集委員等

経営学研究科の研究力の強さは、下のように、国内学会で役員を務めている人数にもあらわれています。おおよそ、教員一人当たり平均1件の学会役員を務め、学会のリーダー的役割を果たしているといえます。

学会の役員等の状況

役職(2024年7月現在) 人数
学会会長・副会長・理事長 7
学会常任理事・理事・評議員・監事・顧問 48
学会幹事・事務局長等 16
合計 71

社会貢献の状況

経営学研究科は、大学としての主体性・自律性を保ちながら、教育研究活動において産業界との相互交流を促進し、批判、研鑽しあい、アカデミズムと産業界がともに発展し、その研究成果を、学内・学外における教育活動のみならず、広く社会一般に公開しています。その一例が、学界人・ビジネスパーソンを構成員としているNPO法人現代経営学研究所(RIAM)との共催によるシンポジウムやワークショップ(年3〜4回)で、その内容はRIAMの会報誌『ビジネス・インサイト』に掲載されています。RIAMは、経営学研究科の教員とビジネスパーソンとの協働を推進するためのプラットフォームとしての役割も果たしています。

研究の成果は、産業界や社会一般のほかに公的機関にも広く還元されており、大きな貢献を果たしています。具体的には、国や地方公共団体の各種委員会や国家試験関係の委員会、政府系研究機関の研究会等に参加しています。

各種委員会への参加人数

  H29 H30 R01 R02 R03 R04 R05
教員数 54 53 55 55 55 55 58
委員委嘱件数 45 54 52 40 39 32 37
(国) (32) (31) (24) (28) (21) (17) (25)
(地方公共団体) (13) (23) (28) (12) (18) (15) (12)
教員10人当たり委嘱件数 8.3 10.2 9.5 7.3 7.1 5.8 6.4

また、研究の成果や蓄積した知見を基にした主張や発言は、新聞・雑誌等のメディアにおいて、多数取り上げられています。そのほか、経営学部・経営学研究科の卒業生は、学界に留まらず政治・経済の多方面で活躍しています。

アドバイザリー・ボードについて

神戸大学大学院経営学研究科では、平成14年4月に、経営管理に関する高度専門職業人(経営のプロフェッショナル)の養成を目的とした「専門大学院」が設置されたことを契機として、社会人大学院教育を含めた経営学研究科全体の研究・教育および社会連携の諸活動について、有識者の方々から、大所高所の観点からさまざまなアドバイスをいただくために「アドバイザリー・ボード」を設置しています。令和6年3月までに合計22回の「アドバイザリー・ボード会合」が開催され、毎回、活発な意見交換等が行われています。

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(2024.10更新)

財政状況

経営学研究科の共通予算の収入は、教育研究基盤経費(既定経費)(以下「既定経費」という。)と外部資金の獲得に伴う間接経費です。そのうち、既定経費については、配分額が年々削減されているため、募集要項・学生便覧等印刷物のPDF化、新聞購読の取り止め等、管理経費の削減を行ってきました。しかし、年々既定経費の配分額が少なくなり、これらの削減だけでは収支の不足を解消できないため、個人研究費をはじめ研究費を削減せざるを得ない状況となっています。

予算額の推移(教育研究基盤経費(既定経費)、間接経費)と個人研究費

(千円)

  H30年度 R01年度 R02年度 R03年度 R04年度 R05年度
教育研究基盤経費
(既定経費)
134,604 132,114 129,871 127,793 125,748 123,736
間接経費※ 13,249 12,001 13,440 8,269 9,245 12,849
個人研究費の配分額 300 300 300 300 300 300

※ 分担金送金に伴う間接経費学外送金分除いた額

運営費交付金のうち、今まで多く配分されてきた機能強化経費は、第3期中期目標期間(令和3年度まで)で終了し、第4期中期目標期間以降は先が見通せない状況です。既定経費が年々削減されていることから、経営学研究科共通予算からの研究費の配分は、年々厳しくなっています。研究活動を継続していくためには、今後、外部資金の獲得がますます重要になります。

予算額の推移(競争的資金)

(千円)

H30年度 R01年度 R02年度 R03年度 R04年度 R05年度
科学研究費補助金 件数 53 46 48 42 40 37
金額 135,590 120,780 143,190 81,450 69,392 84,651
科研以外の外部資金 金額 37,513 35,162 39,350 28,982 102,703 130,070
機能強化経費※ 金額 48,376 48,687 44,409 41,031 25,653 25,772

※ 機能強化経費は文部科学省・学内配分含む

その他外部資金(共同研究、受託研究、その他)の推移

(千円)

H30年度 R01年度 R02年度 R03年度 R04年度 R05年度
その他外部資金 件数 33 51 28 27 40 47
金額 37,513 35,162 39,350 28,982 102,703 130,070

(2024.9更新)