日本のビジネスシステム:その原理と革新
著者名 | 加護野 忠男、山田 幸三 編(第11章 栗木 契 担当) |
---|---|
タイトル | 『日本のビジネスシステム:その原理と革新』 |
出版社 | 有斐閣 2016年11月 |
価格 | 2808円 税込 |
紹介
ビジネスシステムとは、本学名誉教授の加護野忠男先生が提唱した概念で、企業内並びに企業間の協同の制度的枠組みを指します。企業は、製品やサービスの差別化競争の背後で、ビジネスシステムの差別化競争を繰り広げています。ビジネスシステムの差別化はより長期的な競争優位の源泉となり、企業の盛衰に大きな影響を与えます。
本書では、日本企業の競争のなかから生まれたビジネスシステムの諸事例を「日本企業の再生と成長を支えたシステム」「日本の伝統産業の長寿を支えてきたシステム」「新しい設計思想を持った先駆的な企業のシステム」の3つのカテゴリーにわけて俯瞰し、ビジネスシステムを支える各種の原理の探究が、最新の研究成果を踏まえて進められます。
私はそのなかで、第11章を担当し、「速度(スピード)の経済」と「組み合わせの経済」というビジネスシステムの2つの設計思想を、比較事例分析を踏まえて検討しました。速度や組み合わせがビジネスにもたらす経済とともに、不経済も分析の俎上にあげることで、市場を異質なビジネスシステムがぶつかり合う場ととらえ、競争しつつ共存する企業間の棲み分けの論理を探りました。
本書が、21世紀を生き抜いていこうとする企業の指針となることを願っています。
序章 ビジネスシステムの視点
第1部 日本企業の再生と成長を支えたビジネスシステム
第1章 コーポレート・スピンオフ;子が親を超える事業展開
第2章 長期的関係による信頼構築;自動車部品の系列取引システム
第3章 新たな協業の形;境界を越えていく自動車開発
第4章 取引制度の中核:総合商社・伊藤忠商事の誕生
第5章 製造と販売の統合と協働;JIT,SPA,CVSの設計思想
第2部 地場産業・伝統産業のビジネスシステム
第6章 連携のネットワーク;仲間型取引ネットワークと起業家
第7章 長寿企業の家族的経営の力;金剛組の超長期存続の叡智
第8章 経営と技能伝承のビジネスシステム;彦根仏壇産業の制度的叡智
第9章 集積のなかでの切磋琢磨;競争が支える協働と工程別分業
第3部 先駆的なビジネスシステム
第10章 制度的独立を通じたビジネスシステム改革;積水ハウスのスピンオフ
第11章 複合的な競争における協同;ビジネスシステムの設計思想再考
第12章 マネびと学び;創造的模倣と日本的応用力
第13章 社会問題の解決システム;社会企業家と問題解決コミュニティ
終章 ビジネスシステムの日本的叡智