法が作られているとき

著者名 堀口真司(訳)
タイトル 『法が作られているとき』
出版社 水声社 2017年6月
価格 4860円 税込

紹介

 本書は、ブルーノ・ラトゥールの著書LA FABRIQUE DU DROIT: Une ethnographie de Conseil d’Etat (2002)の日本語訳である。本書では、フランス行政法最高裁判所(コンセイユデタ)での4年間にまたがる参与観察の結果が報告されている。これまで著者は、実際にいくつかの参与観察を通じて、ある現象を科学的に話すとはどういうことであるのかについて、そのもっともらしい定義を抽出することを試みてきた。本書でも同様に、ある不正を法的に話すとはどういうことであるのかについて、コンセイユデタに関する一連の注意深く工夫されたエスノグラフィックな仕掛けの中から、そのもっともらしい定義が抽出され、演繹され、強調されている。
 著者によれば、科学、宗教、政治、技術、経済、法などが「社会的に」説明される際、これまでひどく誤った解釈がなされてきた。これらの現象が説明されるときに何気なく「社会」と呼ばれてきたものが、むしろ科学的、宗教的、政治的、技術的、経済的、法的な結び目によって確立された種々のつながりの結果であると理解されなければならないと指摘する。著者は、過去30年以上にわたり、こうしたつながりを確立する方法を定義するために、多くのフィールドワークに取り組んできた。本書は、このような関心を持つ著者が、科学的事実の構築ではなく、「法的事由」(‘moyen de droit’)の構築を明らかにすることを試みた、『実験室生活』的著作である。

*2018年8月11日付『図書新聞』(3363号)の中で、本書の書評が掲載されました。評者は、伊藤嘉高先生です。本書の意義が丁寧に整理され、読み方について的確に解説されておりますので、合わせてご参照ください。

【目次】

序文
第一章 ポナパルトの影の中で
第二章 利用に最適なファイルの作り方
第三章 宮殿の本体
第四章 法の通り道
第五章 科学的対象物と法的客観性
第六章 法について話す?