長寿ファミリー企業のアントレプレナーシップと地域社会: 時代を超える京都ブランド
著者名 | 辻田素子(編著)、原泰史(第3章 著) 他 |
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タイトル | 『長寿ファミリー企業のアントレプレナーシップと 地域社会: 時代を超える京都ブランド』 |
出版社 | 新評論 2023年2月 |
価格 | 3080円 税込 |
紹介
同族経営の強みをいかんなく発揮し、時代に即した試みで長らえる京の同族経営企業。
その伝統継承と革新の歴史と今に学ぶ本格研究
「同族経営」という言葉に、みなさんはどんなイメージを抱きますか。創業者一族が株も経営権も独占、世襲が当然視され、無能な後継者のせいで内紛でも起きれば「お家騒動」と、ネガティブな印象が拭えないかもしれません。
では「老舗」、とりわけ「京の老舗」はどうでしょう。ノーベル賞作家の川端康成や喜劇王チャップリンも愛した柊屋【ひいらぎや】旅館、ミシュランガイドで三つ星に輝く茶懐石の瓢亭【ひょうてい】といったビッグネーム、あるいはペットボトルの本格緑茶で有名な製茶企業・福寿園、斬新な香りを独自ブランドで展開する香メーカー・松栄堂のような個性派。その名はいずれもポジティブな響きをもって聞こえるのではないでしょうか。
でも、これら京都を舞台に長年にわたり事業を営んできた老舗の大半が、同族経営のファミリー企業なのです。同族経営は、かつては経済合理性を欠いた前近代的な形態と見られがちでしたが、深く調べてみると「長期的視点が持てる」「決断が迅速」といったメリットも多数持ち合わせています。
本書は、京都の地で同族経営の強みをいかんなく発揮し、時代に即した試みで100年の時を超えて「襷【たすき】」をつないできた「長寿ファミリー企業」に着目したものです。その秘訣を探るため、西陣織や仏壇仏具などの伝統的分野から、電子部品や産業機械、航空機部品といった近代産業にわたる多彩な事例を取り上げています。
長寿ファミリー企業は創業以来、どのような革新を起こしてきたのか。未知への挑戦を重ねる気骨は世代を超えて継承されるのか。京都という地がその興亡にどのような影響を及ぼしているのか。さまざまな角度から検証しています。
実は日本の企業のほとんどは中小零細であり、同族経営です。少子高齢化で事業承継の難しさが増す一方、外部環境は大きく変化し、新しい領域に乗り出す必要性も高まっています。京都の長寿ファミリー企業とそれを育んできた地域の叡智が、中小企業経営や産業振興に携わる全国の方々にヒントを提供できることを願っています。(編著者・辻田素子)
目次
第1章 老舗ファミリービジネス、アントレプレナーシップ、地域社会
第2章 京都の産業の歴史
第3章 京都の長寿企業の特徴とオスカー認定制度および認定企業の概要
第4章 西陣織の(株)秋江――伝統的繊維産業から観光産業へ
第5章 京黒紋付染の㈱京都紋付――SDGs を意識したアパレルの染替えビジネス
第6章 京仏壇・京仏具の㈱小堀――納骨壇で先陣を切る
第7章 原点回帰のイノベーション、(株)丸嘉――材木商から古材のネット販売へ
第8章 社員との共闘で時代を超える近江屋ロープ(株) ―― 麻糸や綿布などの商いから獣害防止ネットシステムの開発販売へ
第9章 京都が育んだ伸銅・電線業―― 明治期の津田合名会社
第10章 ニューセラミックスメーカー、西村陶業(株)――精密材料開発に向けたあくなき挑戦
第11章 金属熱処理業の(株)KOYO熱錬―― 京都が育てた製造技術を基礎に航空機部品分野に参入
第12章 伸銅機の世界的メーカー、生田産機工業(株)――海外への事業展開
第13章 航空宇宙用ボルト・ナットの(株)寺内製作所―― 組合主導で経営再建・第二創業
第14章 調査先9社の登記事項とこれ関する分析――老舗企業は会社法をどのように活用している
終章 長寿ファミリービジネスのアントレプレナーシップと地域社会――京都の革新的企業からの含意